PR

ライフ ライフ

フェルメール展(4)酒 「欲望」と「節度」の間で…

Messenger
ヨハネス・フェルメール「ワイングラス」1661~62年頃 ベルリン国立美術館 (c)Staatliche Museen zu Berlin,Gem?ldegalerie /J?rg P.Anders
ヨハネス・フェルメール「ワイングラス」1661~62年頃 ベルリン国立美術館 (c)Staatliche Museen zu Berlin,Gem?ldegalerie /J?rg P.Anders

 ずいぶんご機嫌な様子だ。その名も「陽気な酒飲み」。男は両手でジョッキを握り、テーブルにはタバコと小さな火鉢も見える。

 プロテスタント中心の17世紀オランダ社会で、過度の飲酒や喫煙はあしき習慣。こうした風俗画は戒めのためとされるが、果たしてそれだけだったのか、とも思う。なぜってこの絵、見ていると、何となく幸せな気分になりませんか?

 「陽気な酒飲み」といえば、フランス・ハルス(1582/83~1666年)の名画がよく知られている。オランダ・ハールレムを拠点に活動したハルスは主に1620年代、鼻と頬に赤みが差す酔っ払い男の単身像で人気を博したという。一方、「フェルメール展」で展示されているこの絵は当時のオランダでは珍しい女性画家、ユーディト・レイステル(1609~60年)の作品。ハールレム生まれのレイステルがハルスの下で修業したのかは不明だが、影響を受けているのは間違いない。

 誰しも欲望に負けることはある-。ハルスやレイステルが描く庶民的な酒飲みには、そんな共感や親しみがわくが、ヨハネス・フェルメール(1632~75年)の日本初公開作品「ワイングラス」はちょっと優雅な雰囲気。ワインを飲み干そうとする女性を見つめるのは、黒い帽子の男性。さらにつぎ足そうと陶器のピッチャーを持って待っているのだ。

 気になるのは2人の関係。「男女がいて、酒があって楽器(椅子の上にリュート)がある。普通の夫婦や親子じゃないことは、当時の人々も理解していた」と同展日本側監修者の千足伸行・成城大名誉教授は語る。女性の顔は白い頭巾でほとんど隠れているが、男性は何とも思惑ありげ。かたや、ステンドグラスの窓には手綱を手に取る女性が描かれ、すなわち「節度を守れ」との教訓。色恋沙汰を戒める寓意(ぐうい)である。

 フェルメールは男女とワインをモチーフに作品を3点残しており、今回出品されていないが「ワイングラスを持つ娘」(独アントン・ウルリッヒ美術館蔵)では白ワインが描かれている。17世紀当時、低地かつ気温の低いオランダでワイン造りは行われていなかったそうだが、富裕な市民らはフランス産の白ワインを愛飲したという。「ワイングラス」で女性が飲んでいるのもきっと、「白」だろう。(黒沢綾子)=おわり

                   ◇

 「フェルメール展」は上野の森美術館(東京・上野公園)で来年2月3日まで開催。12月13日は休み。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ