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【書評】京都大学名誉教授・竹内洋が読む『高坂正堯 戦後日本と現実主義』服部龍二著

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『高坂正堯 戦後日本と現実主義』服部龍二著
『高坂正堯 戦後日本と現実主義』服部龍二著

 ■興味尽きない「智者」の評伝

 国際政治学者の高坂正堯(こうさかまさたか)は、平成8年、62歳の若さで黄泉(よみ)の国に旅立った。しかし、『文明が衰亡するとき』や『国際政治』などはいまでも読み継がれている。

 私は、大学生のとき高坂28歳の論壇デビュー論文「現実主義者の平和論」(『中央公論』)を読んだ。当時の論壇はマルクス主義が支配し、それに気遣いしながらの論文が多かった。それだけに、そんな呪縛から解き放たれた論客の登場に爽快さを感じた。

 高坂33歳のときの『宰相 吉田茂』は、ワンマン政治といわれ不人気だった吉田政治を再考し、敗戦日本が生きのびる道となった「商人的国際政治観」を抽出した。吉田茂をめぐる評価の鮮やかな逆転だが、論調に青年客気風は微塵(みじん)もない。老成というべき論理と文体に圧倒された。このような論客はどのようにして誕生したのか。

 今、それに答える著作があらわれた。著者は高坂の著作を丹念に読み込むだけではなく、高坂文庫(静岡文化芸術大学蔵)を利用して高坂が読んだ本の下線や書き込みを克明に調べあげる。そして高坂の言論を同時代の国際・国内状況の中に再現させ、検討している。といっても、堅苦しい本ではない。随所に高坂をめぐる逸話が挟まれ、ありし日の人間・高坂正堯を甦(よみがえ)らせている。

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