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【聞きたい。】榎本憲男さん『ブルーロータス-巡査長 真行寺弘道』 本業の映画より自分出せる

榎本憲男さん=10月31日、東京都千代田区(藤井克郎撮影)
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 前作の「巡査長 真行寺(しんぎょうじ)弘道」を出したのが今年3月。それから半年で、早くもシリーズ2冊目を上梓(じょうし)した。「とにかく早く書けといわれて、そこから物語を考えました」と苦笑する。

 長く映画プロデューサーを務め、映画監督でもあるが、平成27年に発表したサスペンス小説「エアー2・0」が大藪春彦賞候補となるなど評価を受け、シリーズものの探偵小説を手がけることになった。主人公はロック音楽とオーディオが好きな警視庁のベテラン刑事。出世を拒否し、53歳になっても最下級の巡査長のままだが、推理力と行動力は超一流という存在だ。

 今回は、荒川の河川敷でインド人旅行者が変死体で発見された事件を軸に、ロックやインドポップスが行間に鳴り響く軽快な物語が展開する。舞台も東京から北海道、インド・チェンナイと壮大に広がるが、「インドは行くつもりだったけど、時間がなかった。想像力を駆使しました」。

 すっかり小説家が板についてきたが、映画と比べると回想場面が厄介だと打ち明ける。「映画はいとも簡単に回想になるが、小説の場合は現在への戻りが難しい。読者を混乱させたい気持ちもあるが、混乱させすぎるとやばいですしね」

 ヒンズー教やカースト制度といったインドに根づいた文化的考察も大きな柱だが、もともと宗教学に興味があったところに、インド研究の第一人者、田辺明生氏の超難解な論文に出合ってとりこになった。

 「難しくてわかりにくいけど、立ち止まってでもじっくり吟味して、根性で理解した方がいいと予感させる文章だった。この論文に対する共感と反感が、この本を作った一つの大きな要素でもありますね」

 1、2作目とも重版になり、すでに3作目の構想を練っている。ますます映画から遠ざかっていきそうだが、「小説の方が自分が出るし、すべての責任は自分にある。そういうすがすがしさがあります」と痛快そうな笑顔を見せた。(中公文庫・800円+税)

 藤井克郎

                   

【プロフィル】榎本憲男(えのもと・のりお) 昭和34年、和歌山県生まれ。青山学院大学卒。監督作に映画「森のカフェ」など。

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