PR

ライフ ライフ

【アート 美】中谷芙二子さん個展 柔らかな「抵抗」の軌跡

最新作「カウンターポイント(対位法)」を語る中谷芙二子さん。水戸芸術館の中庭を霧で包んだ
Messenger

 今秋、第30回高松宮殿下記念世界文化賞(彫刻部門)を受賞した霧のアーティスト、中谷芙二子(なかやふじこ)さん(85)の初の大規模個展「霧の抵抗」が、水戸芸術館(水戸市)で開かれている。代表作の「霧の彫刻」やビデオを使った表現活動を、「抵抗」をテーマに読み解く構成。自然環境への意識が高まり、情報化社会の弊害にも気づき始めた1970年代の時代精神が、全体を流れる通奏低音となっている。(黒沢綾子)

                  

 水戸芸術館中庭の広場が、みるみる霧に包まれてゆく。同展に合わせ構想された新作「カウンターポイント(対位法)」。中谷さんが人工霧を噴射させたのは、広場のシンボル、宙づりされた巨石のある噴水。その暴力的なたたずまいが気になったという。

 同館を設計した建築家、磯崎新(あらた)さん(87)が中谷さんに明かした意図によると、激しく水に洗われる巨石は「機動隊の放水を受ける東大安田講堂」の隠喩(いんゆ)。そこに、柔らかい霧が絡む。剛と柔で対照的だが、抵抗(レジスタンス)の記憶を秘めた建築とアート-2つの旋律が共鳴する作品となった。

                  

 大気を鋳型(いがた)とし、風に寄り添い、周りの環境と呼応しながら姿を変える霧の千変万化を、中谷さんは霧の彫刻と呼ぶ。技術者と芸術家の協働を推進する米実験グループ「E.A.T.」の一員として70(昭和45)年の大阪万博「ペプシ館」で初めて霧の彫刻を発表して以来、世界各地で手掛けた霧の作品は80を超える。

 アンモニアなどを使った化学の霧ではなく純粋な水霧を使い、人が入って遊べる彫刻、全身で体感できる彫刻にこだわってきた。今回「抵抗」という強い言葉を選んだ背景には危機感がある。「近年の激しい気候変動は人間の仕業。ペットボトルの水しか飲めない人が増えているように、自然への信頼や敬意が薄れてきている。霧の彫刻をメディアに、自然と人間の関係をもう一度取り結びたい」と力を込める。

 もう一つの新作「フーガ」は、霧で満たした展示室内で映像を投影する実験的作品。空を飛び交うカラス、突如崩れる霧…。「都市で迫害されてきたカラスが、滅びゆく地球に別れを告げるさまを表現したかった」と中谷さんは語る。

                  

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ