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【主張】iPS治験を実施 本格実用へ堅実な前進を

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 京都大は、脳神経系の難病であるパーキンソン病の患者の脳に人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った神経細胞のもとを移植する臨床試験(治験)の1例目を実施したと発表した。

 さまざまな組織や臓器の細胞に分化できるiPS細胞による再生医療の本格的な実用化に向けた大きな一歩である。

 国内の患者数が約16万人、世界では数百万人と推定されるパーキンソン病患者をはじめ、多くの難病患者がiPS細胞による治療の実現を待ち望んでいる。

 iPS細胞の臨床応用では、理化学研究所などが目の病気に対する移植を実施した例がある。脳への移植はリスクが大きく、京都大の治験は今後の臨床応用に大きな影響を与える。

 治験の最大の目的は安全性と有効性の検証である。それだけではなく、基礎研究と臨床の連携、提供するiPS細胞の管理、患者や家族への説明と同意、手術後のサポートなど数多くの過程を丁寧にクリアする必要がある。

 京都大チームを中心に、すべての過程で後続の研究・医療チームの模範となるような仕組みを確立してもらいたい。そのためには、患者のプライバシーに配慮したうえで最大限の情報公開、透明性の確保が不可欠である。

 日本の医療、製薬は基礎研究では優れた実績を誇るが、臨床、実用化では欧米に大きな後れをとってきた。京都大の治験は、日本の医学界や研究社会の短所、弱点を克服していくうえでも極めて重要な意味を持つ。

 さらに、iPS細胞は医療全般に革新をもたらす可能性がある半面で、使い方によっては従来の医療とは異なる倫理的な問題を引き起こす恐れもある。

 だからこそ、日本が臨床応用でも世界をリードする意義は大きく、責任は重いのである。

 iPS細胞に対する大きな期待の裏側には、成果にはやる功名心や経済効果にとらわれる「負の心理」が潜んでいることも、あえて指摘しておきたい。

 京都大の山中伸弥教授は「難病の患者を救いたい」という思いからiPS細胞を開発した。

 その思いを研究者と医療行政、そして国民一人一人が共有し、治験から実用化への過程を堅実に進めることが、多くの難病患者を救う最善、最短の道である。

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