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【話の肖像画】建築デザイナー カール・ベンクス(76)(5)

額装したブルーノ・タウトの著書を手に。右奥は事務所兼レストラン=新潟県十日町市
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 ■若い大工と古民家生かす

 〈新潟県十日町市の松代地域にある廃業した老舗旅館を買い取り、平成22年に再生した。2階に自らの事務所を構え、1階には大好きな日本語から命名したレストラン「渋(しぶ)い」を開店した〉

 そのころ、松代地域の街並みを再生する市の事業がちょうど始まりました。住宅や店舗の外壁などを周りの景観に合わせるプロジェクトです。上限はあるものの、市が費用の70%を補助し、自己負担は30%で済みます。事務所にした元旅館を含めて8軒ほど手掛け、カラフルな外壁にしました。

 古い建物の再生では(壁に組み込む)木の付け柱を幅広にすることで頑丈に見えるようにします。屋根も大きくして形を良くすれば、雨が早く流れて雨漏りもしない。ドイツから持ってきた鉄平石(てっぺいせき)を屋根に使えばいろいろな加工もできて、地震にも強い。日本の土間もとてもいいですね。

 外壁の色は街によって規制があるので守らないといけませんが、欧州の街ではピンク色とか黄色とかはよくあります。私が住んでいる竹所(たけところ)集落で再生した「イエローハウス」は、周囲が木の緑なので楽しい色が合うと考えて黄色の壁にしました。弥彦神社(同県弥彦村)の近くにある土産物店と喫茶店が入る建物の再生では、少し派手かなと思いましたが赤い壁にしました。ちょっと目立った方がいいと思います。

 〈京都の桂離宮を海外に紹介したドイツの建築家、ブルーノ・タウトの影響を受けている。「渋い」の店内には父の蔵書だったタウト著「日本の家屋と生活」が額装され、大切に飾られている〉

 この本には「日本人はただの職人ではなく、芸術家である」と書いてあります。本当に70、80代の棟梁(とうりょう)の技術はすばらしく、その通りです。

 ただ、今の家屋は構造的にはパネルが多く、オートメーション化で職人が不要になっている。若い大工は古い建物を直すことで勉強できるのに、仕事がなくて技術を覚えられないのです。このままでは世界で最も優れた日本の木造建築技術はなくなってしまう。古い建物は見かけが汚くても、きれいにすれば何百年も使えます。古い建物を残せば修復する必要が生まれ、技術も引き継がれていきます。

 私がドイツに戻って住むことは、もうないでしょう。死ぬまで、ここで暮らします。友達がたくさんいて、仕事もすごく満足できて、若い設計士の跡継ぎもいます。私の墓の場所も竹所の山の中で見つけました。妻も知っています。

 これからも古民家をなるべく生かしていきたい。大きさによって違いますが、3千万円ぐらいからの費用で、再生した良い住居で暮らせます。再生だけではなく、技術的に古民家と同じ構造の建物を、現代の新しい材料で若い大工と一緒に竹所でつくりたいと思っています。竹所に住む人をもっと増やしたい。その思いは変わりません。(聞き手 村山雅弥)=次回はノンフィクション作家の神山典士さん

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