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【本郷和人の日本史ナナメ読み】気になる徳川家の人々(上)歴史叙述には「物語」が不可欠

徳川家茂像(模本、東大史料編纂所蔵)
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 先にテレビの番組の「徳川家の人々でスゴイのは誰?」というアンケートに協力しました。ガチの歴史番組ではありませんので、そこはいろいろ「忖度(そんたく)」して答えましたが、1位はどうしても水戸黄門です。史料編纂(へんさん)を始めた大先輩ですから、この方は外せない。

 それで、第2位に推したのは、徳川家茂。第14代将軍です。なぜこの人かというと、いわば「人間力」。幕末の公武合体の動きの中で、孝明天皇の妹君である和宮が家茂のもとに輿(こし)入れした。和宮は「京都を離れて江戸に行くのは絶対にイヤ」と拒絶の意志を明確に示していたのですが、周囲の「大人の事情」でやむなく江戸に東下。でも、この結婚に救いがあったのは、夫婦となった家茂と和宮が仲むつまじかったことです。家茂さん、とてもいい人だったのでしょうね。

 あのくせ者の勝海舟も、家茂には強烈な忠誠の念をもっていた。江戸の旗本・御家人からの支持も絶大だった。一方で最後の将軍、徳川慶喜は人気がなかった。このあたりがとても面白いところで、慶喜は「神君家康公の生まれ変わり」と謳(うた)われるほどの器量人だった。家茂はというと、彼が優秀だとか、こんな特技を持っているとかの話はまったく見当たらない。

 これはまさに「将軍など、上に立つ者の資質」を示す良い事例です。ぼくは詳しくは知りませんが、欧米の企業トップは、なにしろ「抜群に優秀でべらぼうに働く」イメージがある。自分に厳しいけれども他人にも厳しい。企業成績に応じて、目の玉の飛び出るような高額の報酬を受け取る。このスタイルはなかなか日本には受容されなくて、わが国では「存在を感じさせない」マネジメントやトップが理想とされますね。家茂と慶喜の関係は、日本的な特徴そのものかもしれません。

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