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フェルメール展(1) 働く女性 「勤勉」の美徳を象徴

ニコラス・マース「糸を紡ぐ女」1657年頃 アムステルダム国立美術館Loan from the Rijksmuseum
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 穏やかな光が差し込む簡素な台所で、若いメイドが黙々と器に牛乳を注いでいる。オランダの画家、ヨハネス・フェルメール(1632~75年)が20代後半に描いた初期の傑作「牛乳を注ぐ女」。彼女は働き者らしく、がっしりした体つき。硬くなったパンを無駄にせぬよう、ミルクを注いでパンプディングかパンがゆを作っているのだ。

 17世紀にスペインから独立を果たしたオランダは、プロテスタント中心の共和国として海洋貿易で欧州屈指の経済的繁栄を誇る一方、プロテスタント社会らしくつつましさや勤勉を美徳とした。レースを編んだり子供の世話をしたりと、家事にいそしむ女性は好ましい画題だったのだろう。巨匠レンブラントに師事したニコラス・マース(1634~93年)は、静かな部屋の片隅で糸を紡ぐ老女を描いている。

 絵画を買い集める富裕な市民階級が当時、女性の使用人を雇うのはごく一般的だったようで、時には色恋沙汰のトラブルも起きたという。オランダ風俗画には欲望の象徴として蠱惑(こわく)的なメイドもよく登場するが、メイドの監督はその家庭を取り仕切る女主人の仕事。その点、牛乳を注ぐ“彼女”は真面目で純朴そうで、雇い主も安心できる理想の姿なのだろう。

 「フェルメールは、日常をちょっぴりステキに映し出す天才でした。今で言う、人気インスタグラマーみたいにね」。所蔵するアムステルダム国立美術館の学芸員、ピーテル・ルーロフス氏はこう表現する。

 彼女がまとう服の、鮮やかな黄と青の対比が美しい。足元には寒い季節に活躍する足温器。その奥、白壁の接地部分はデルフト焼のタイルで飾られている。タイルに近付くと愛の神キューピッドの絵柄も見えるが、すぐに恋愛と結びつけるのは早計のようだ。

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