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【書評】『三島由紀夫紀行文集』佐藤秀明編 ハワイ・フランス…三島が記した世界

『三島由紀夫紀行文集』佐藤秀明編
『三島由紀夫紀行文集』佐藤秀明編

 今年11月25日で死後48年になる三島由紀夫だが、ちょっと信じ難い出来事が起きている。静かなブームの到来だ。昨年も年明け早々に未発表の録音テープの存在が話題になり、単行本化。昭和37年の『美しい星』が初めて映画化された。今年はパルコのプロデュースで遺作の長編『豊饒(ほうじょう)の海』や娯楽小説の『命売ります』が戯曲化され、11月から年末まで上演される。

 こうした状況の中で三島初の紀行文集が岩波で文庫化されたのもさして不思議はない。本書は近畿大学教授で三島文学館館長の佐藤秀明氏がまとめた。なぜ、三島が現在も存在感を放ち、生き続けているのか。その秘密も本書に凝縮されている。

 三島の初の海外旅行は日本がまだ占領下の26年に朝日新聞の後援で実現した。26歳の三島は船でハワイへ。そしてアメリカからブラジルに渡り、フランス、ギリシャと巡る。有名な『アポロの杯』になった世界一周の紀行文。そして、自決3年前の「『仙洞御所』序文」に至るまで、海外だけでなく渋谷、銀座の印象記や熊野紀行などの取材記まで収録されている。

 《香港。--この実に異様な、戦慄的な町の只中で、私はしかし、永らく探しあぐねていたものに、ようやくめぐり会ったような感じがする。(中略)強いて記憶を辿(たど)れば、幼時に見た招魂社の見世物(みせもの)の絵看板が、辛うじてこれに匹敵するであろう》(「美に逆らうもの」)という36歳の発見が43歳で訪れるインド・ベナレスの衝撃に繋(つな)がる。

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