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【話の肖像画】農業者・涌井徹(70)(1)風雲児、タマネギに挑む

開墾に取り組む荒れ地に立つ=秋田県大潟村
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 〈秋田県大潟(おおがた)村は、琵琶湖に次ぐ日本第2の広さの湖だった八郎潟を干拓して昭和39年に生まれた。戦後日本の食を支えるコメを増産する「モデル農村」だった。だが食卓の欧米化で需要の減少が進み、涌井さんが入植した45年には生産調整が始まっていた。その減反政策が廃止された今年、本腰を入れるのはタマネギだ。50年以上も耕作放棄地となっていた荒れ地を県農業公社から借り受け、開墾して畑にした〉

 タマネギは外食産業、家庭用のいずれも需要が多い。東北地方からは北海道や西日本、九州など、主な生産地の端境期に当たる夏に出荷できる。中国産を使う業者もあり、日本産を作れば買ってもらえると考えました。農家の平均保有地が約15ヘクタールと大規模な大潟村では、植え付けや消毒・収穫などの農作業を機械化できることが栽培の条件です。これまで村で作ってきたカボチャやメロンは高収益だけれど、手作業が多くて無理。幸いタマネギは機械化できます。

 借り受けた約20ヘクタールの土地は、湖の底にあった湿地が長い年月をかけて乾いた手ごわい荒れ地。3メートルほどの高さに生い茂るヨシを刈り取り、10メートルもの高さの老木を掘り起こし、ブルドーザーで整地して暗渠(あんきょ)を作ってきました。トラクターで走り回っている最中、溝に突っ込んで血まみれになり、頭を数針縫うけがを負ったこともあります。

 苦労の末に昨年植え付けたタマネギは、残念ながら期待通りの収穫には結びつきませんでした。その反省を踏まえて今年は土壌改良もし、委託分も含めて面積を50ヘクタールに増やして臨みます。

 〈タマネギ栽培は、社長を務める株式会社の大潟村あきたこまち生産者協会と三井住友銀行、秋田銀行などが設立した「みらい共創ファーム秋田」の提案だ。生産者のノウハウと金融機関のネットワークを生かす新しい農業の仕組み作りを目指す〉

 秋田は人口減少と高齢化で人手不足が深刻です。労働力不足を解消し、生産コストを下げ、付加価値の高い農業の仕組みを作れるかどうか。減反部分をどう補い、豊かな暮らしができるかどうかは農家の課題です。まず私がやって皆さんに見せたい。

 入植当初に始まった減反政策と対峙(たいじ)し、コメの直接販売ルートを全国展開して、6次産業化にも取り組んできました。時代の変わり目に新たなチャレンジをする、何事も常に10年から20年早く取り組むのが私のポリシー。「常に泳ぎ続けていないと死ぬ」といわれるマグロと同じかもしれません。(聞き手 藤沢志穂子)

                   ◇

【プロフィル】涌井徹

 わくい・とおる 昭和23年、新潟県十日町市生まれ。同県農業教育センター(現県農業大学校)卒。45年、秋田県大潟村に入植し、コメの販売ルートを開拓。62年、株式会社大潟村あきたこまち生産者協会を創業。グルテンフリー商品などコメの6次産業化と輸出に取り組む。平成28年、株式会社みらい共創ファーム秋田を設立。農業の高収益化を目指す。

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