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【明治の50冊】(29)泉鏡花『高野聖』 近代化を相対的に捉えた傑作

泉鏡花(泉鏡花記念館提供)
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 当代一の人気作家、尾崎紅葉(こうよう)に師事していた泉鏡花(きょうか)が「夜行巡査」「外科室」で脚光を浴び、新進作家の仲間入りを果たしたのが明治28(1895)年。「高野聖(こうやひじり)」はその5年後、鏡花26歳のときに発表した幻想小説だ。春陽堂の文芸雑誌「新小説」2月発行の巻頭を飾る作品だったが、当時の評価がどうだったのか、実は専門家の間でも研究され尽くしてはいない。

 「当時から異質だったので人々は驚いたかもしれないが、発表直後の評判はそんなに高くはなかったのではないか。明治33年の発表で、単行本になったのは41年。これだけ間を置いているのは、鏡花作品ではあまりありません」と、泉鏡花研究会の代表を務める昭和女子大教授の吉田昌志さん(63)は推測する。

 「高野聖」は、冬の越前敦賀(福井県敦賀市)に投宿した「私(わたし)」が、相部屋となった僧、宗朝(しゅうちょう)から若いころの体験談を聞くというスタイルで進行する。

 飛騨(岐阜県)から信州(長野県)への山道で、宗朝は孤家(ひとつや)(一軒家)に住む婦人(おんな)(美女)と出会う。蛭(ひる)に吸われた体を谷川の水で流してもらった宗朝は、この婦人と一生を共にしてもと思うが、一緒に住む少年と夜中に聞こえてきた獣たちの鳴き声が気になった。一夜明け、後ろ髪を引かれる思いで孤家をたった宗朝は、婦人の馬を売ってきたという親仁(おやじ)と山道で出くわし、意外な秘密を聞く。

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