産経ニュース

【書評】脚本家・小林竜雄が読む『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子著 若き遠藤周作が応援した「純情」

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【書評】
脚本家・小林竜雄が読む『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子著 若き遠藤周作が応援した「純情」

『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子著 『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子著

 原が文学に興味のなかった自分を深く思ってくれたことが分からない、と困惑していう。今だから分かる。だからよかったのだ。日夜、原は重い体験をいかに小説に昇華させるのかに悩み、暗澹(あんたん)たる想(おも)いの中にいた。そこに出現したのが非文学的で健康なお嬢さんだった。原は彼女を〈聖化〉し救いを求めた。未来の希望も見ていた。それが幻視であることは知っていてもそう思い込まないと生きていけなかったのだ。それだけ被爆体験は辛(つら)い試練だったのである。

 2人を応援したのは後輩の若き遠藤周作。このクリスチャンは原を敬愛していた。その無私の友情は感動的だ。献身といっていい。遠藤は原に〈聖なる者〉、つまりイエスを見ていた。著者は前作『狂うひと』で島尾ミホに“女の情念”の凄(すさ)まじさを見たが、今度は“男の純情”を見事に描いた。(岩波新書・860円+税)

「ライフ」のランキング