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【書評】脚本家・小林竜雄が読む『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子著 若き遠藤周作が応援した「純情」

『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子著
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 広島の原爆を題材にして描くことは難しい。広島にも原爆にも関係のなかった者には特にそうだ。それは今も後遺症に苦しんでいる人を前にして恥ずかしくないものにしなくてはならないからである。

 それでも、脚本を書くとしたら名作「夏の花」で知られる詩人・作家、原民喜(たみき)の生涯を描きたいと思っている。原が残した小説群は被爆の再現ではなかった。被爆がどれほど心に深く影響を与えるのかを見つめたものだった。

 本書は原の愛と死を克明に追ったノンフィクションである。私は改めて原の魅力を確認することができた。

 戦時中に愛妻を病で失った原は生きる希望を失い後を追って死のうとする。だが、原爆で被爆したことでその悲惨さを小説として書き残すまでは死ねないと決意する。その最初の成果が「夏の花」であった。原題は「原子爆弾」だったが占領下ゆえにGHQの検閲を考慮して改題した。

 「三田文学」の編集者になった43歳の原は英文タイピストの21歳の娘に出会い、惹(ひ)かれていく。彼女は普通のお嬢さんであった。なぜ惹かれたのか。それは著者が今も健在な「お嬢さん」と面会ができたことでハッキリ分かる。その人は89歳になっていた。

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