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【アート 美】青年期に死と隣り合わせの体験 優美な牡丹に「生」を見る 松尾敏男展 

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【アート 美】
青年期に死と隣り合わせの体験 優美な牡丹に「生」を見る 松尾敏男展 

「廃船」1966年 長崎県美術館蔵 「廃船」1966年 長崎県美術館蔵

 ひかえめで物静か。そして気品がある。自己主張が強い絵ではない。まじめな性格が伝わってくるような誠実な絵画といっていいだろう。一昨年、90歳で死去した日本画家、松尾敏男。没後初の回顧展が全国を巡回し現在、横浜のそごう美術館で開かれ、代表作を中心に約50点が公開されている。

 穏やかな作品が並ぶ中で初期の代表作の「廃船」(1966年)は少し趣が違う。画面上部に傷ついて使われなくなった木造船を配した。下から見上げる大胆な構図だ。船の下には魚の死骸や漁網がある。荒涼として寂しく、シュールな雰囲気がある。花鳥など端正な題材を好む日本画らしくない。死の世界といっていいのか。

 昭和20年、松尾は東京で空襲にあう。燃え落ちる自宅から逃げ出し、無数の死体を目の当たりにしながら、避難所にたどりついた。幸いにも離ればなれになってしまった家族とも無事に再会を果たした。19歳のときだった。

 松尾作品に詳しい長崎県美術館の森園敦学芸員は「松尾は戦争中、死を覚悟した。生きるとは何か。人生観を『廃船』など初期作品に反映させた」と解説する。

 廃船を主題に描こうと決めた松尾は、船を求めて数年間、北海道を回り、ようやく網走の小さな造船所の片隅にあった破船に出合ったという。

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