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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら】〈34〉「怠惰が幸福」で何が悪い

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無理な抵抗はやめないか

 暑熱と湿気との結合をその特性とするモンスーン域の風土に暮らしながらも、日本人は古来より知恵と工夫によって不快な季節をしのぎ、味わい深い文化を形成してきた。そのことは子孫として誇りに思う。

 薄べりにつどふ荵(しのぶ)のしづくかな(小林一茶)

 「荵」とはシダの一種であるシノブを束にして巻き付けた玉を軒下につるし、緑と滴る水で涼しさを演出するもの。

 現在ではエアコンという文明の利器はあるものの、閉じ籠もってばかりではいられまい。地獄の季節が日本人の精神と肉体、そして行動にどのような影響を与えてゆくのだろう。モンテスキューが書いたように「そこでは怠惰が幸福である」ということになってしまっては、ご先祖さまに申し訳が立たないと思う一方で、「8カ月は勤勉に。4カ月は怠惰で上等」と、考え方を転換するのも手ではないかと思う。

 素人考えだが、暑熱と湿気の獰猛化に代表される気候変動は、崩れたバランスを取り戻そうとする地球の自己修復作用、自然の必然だろう。モンテーニュは第3巻第13章「経験について」において《どうしても避けられない事柄は、何とかしてこれに堪えなければならない。…無理に自然の必然に抵抗するのは、自分の騾馬(らば)と蹴合いをしたクテシフォンの狂態を再び演ずることである》と記している。

 もちろん地球がバランスを崩した原因を探り、地球規模でその対策を検討してゆくべきだが、それはそれとして、眼前の暑熱と湿気の脅威に対しては、これをチャンスととらえて、国民全員が「怠惰で上等」と開き直ってみてはどうだろう。怠惰が生み出す知恵はきっとある。

 ※モンテーニュの引用は関根秀雄訳『モンテーニュ随想録』(国書刊行会)によった。=隔週掲載(文化部 桑原聡)

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