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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら】〈34〉「怠惰が幸福」で何が悪い

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【モンテーニュとの対話 「随想録」を読みながら】
〈34〉「怠惰が幸福」で何が悪い

温度計は37度を表示した今年の夏(酒巻俊介撮影) 温度計は37度を表示した今年の夏(酒巻俊介撮影)

逃げるという 選択肢も考慮に

 夏の炎暑と湿気、そして台風は年々獰猛(どうもう)になっている。わが国にはこれに地震と津波、冬のドカ雪が加わり、最近では竜巻も珍しくなくなってきた。

 自然の脅威から国民の生命を守るためには、何よりも積極的な財政出動による国土強靭(きょうじん)化が望まれるが、自然の猛威は人間をあざ笑うかのように想定を超えてくる。長期的には、強靱化と並行して「逃げる」という視点に立ったより具体的な対策が求められるだろう。まずは災害が起きたときの逃げ道と逃げ場の整備、そして避難所として利用される可能性の高い学校の体育館や公民館などの公共施設をいつでも快適な避難所に転用できるようリフォームすることだろう。助かった命をエコノミークラス症候群によって失うというのは、あまりにも悲しい。

 そのうえでさらに先を見通して、より安全な土地への公共機関や会社の移転とそれに伴う移住も真剣に検討すべきだろう。中国の編者不詳の兵法書『三十六計』は次の言葉で締めくくられる。「走為上」(走るを上と為(な)す=これまで述べた35の計略でも勝算が立たないときは、逃げるのが上策)。そう、「三十六計逃げるに如(し)かず」である。

 これに関連して思い起こされるのが476年に西ローマ帝国が滅んだあとの地中海世界である。「世界の警察官」が不在となった地中海では、しばらくすると北アフリカに拠点を置くイスラムの海賊の天下となる。彼らは航行する船だけでなく沿岸の村々も襲撃し、財産だけでなく村人を拉致して奴隷とした。そうならないため、見張り塔と強固な城壁を築いて海賊に対処する村もあれば、職住隣接の便利さを捨てて崖の上に丸ごと引っ越す村もあった。海賊以上に恐ろしい台風、地震、津波から命を守るには、“強固な城壁の建設と崖の上への引っ越し”の2段構えで対処する以外にないだろう。

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