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【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】(36)蔚山(ウルサン)飛行場の栄枯盛衰 朝鮮の大空かけた旅客機

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【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】
(36)蔚山(ウルサン)飛行場の栄枯盛衰 朝鮮の大空かけた旅客機

蔚山飛行場に来た「愛国」号の前に立つ岩下さん一家(右から2人目が鎮生さん、昭和7年、岩下鎮生氏提供) 蔚山飛行場に来た「愛国」号の前に立つ岩下さん一家(右から2人目が鎮生さん、昭和7年、岩下鎮生氏提供)

 ◆ピカピカの陸軍献納機

 岩下一家が、7年8月に、蔚山飛行場で撮った記念写真が残っている。後ろに写っているのは同月、民間から陸軍に献納されたばかりのピカピカのプロペラ飛行機。機体には『愛国43(朝鮮)』の大文字と日の丸が、垂直尾翼には、機種を示す『九二式戦闘機』の小文字が書かれている。

 献納機は昭和初期に、国民による国防献金などで造られた軍用機。陸軍は「愛国号」、海軍は「報国号」と称した。日本全国のほか、外地の朝鮮、台湾、満州で行われ、企業や団体、女学生や児童のお小遣いなどで献納された飛行機もあったという。

 もうひとつの写真は8年3月、京城-蔚山-福岡便に就航していた日本航空輸送の「フォッカー・スーパーユニバーサル機」を蔚山飛行場で撮ったものである。同機は、3年から製造されたアメリカ製の単発プロペラ機(日本の中島飛行機でライセンス生産された)。約200機が製造されたが、日本航空輸送はうち二十数機を所有する最大のユーザーであった。

 全長約11メートル、420馬力の空冷9気筒エンジンを積み、最大速度は、時速約240キロ(巡航時約170キロ)。航続時間は、約5時間。パイロットら乗員2人、乗客は最大で6人しか乗れなかった。

 飛行機の前にちょうど6人の男女が写っているが、宣伝用にデモフライトで撮ったらしい。岩下鎮生の父、久栄も「一度、乗ったことがある」と鎮生は聞いたことがある。乗客数は年々増加したが、経営環境は厳しかったという。

 9年10月の時刻表によれば、蔚山-福岡間の運賃は18円(所要時間1時間50分)。船と鉄道を乗り継げば、蔚山-博多間は約14時間かかるものの、運賃は、約3分の1の計約6円30銭で済んだ。

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