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【本ナビ+1】三井住友信託銀行元副社長・大塚明生 『AIを信じるか、神(アッラー)を信じるか』島田裕巳著 不安定化する時代の生き方

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【本ナビ+1】
三井住友信託銀行元副社長・大塚明生 『AIを信じるか、神(アッラー)を信じるか』島田裕巳著 不安定化する時代の生き方

三井住友信託銀行元副社長・大塚明生(荻窪佳撮影) 三井住友信託銀行元副社長・大塚明生(荻窪佳撮影)

 人工知能(AI)とイスラム教-。これからの世界の行方に多大な影響を与えるであろう両者は縁遠い存在に思えるが、宗教学者の著者は大きな共通点があるとして次のように指摘する。

 AIは人間には難しい判断を下すようになり、人間も次第にそれに従わざるを得なくなる。イスラム教では唯一絶対の創造神「アッラー」を信仰の対象とし、その神のメッセージを集めた聖典「コーラン」に異を唱えることは許されない。両者とも、「なぜそうすべきか」の理由は明らかにされず、その過程はブラックボックスである。

 グローバル化によって安定性を失った世界では、自由よりも安全が求められる。そんな中では自由を捨て、権威・権力に身を委ねてしまうことは意外なほどに心地よい。社会において不安定な立場の人間がそういった「自由からの逃走」に走るのは、ナチスの台頭にも見られた現象だ。

 今、AIを神として信仰の対象とする宗教団体が誕生している。一方、世界で信者が急増しているイスラム教は絶対的な法の支配の下、ヒト、モノ、資本の自由な移動が保証されるグローバル化を本質とし、また孤立する個人をすくい取る宗教でもある。

 いずれ人間は自由から逃走し、すがるべき対象として、極論すれば「AIかアッラーか」の選択を求められるようになる。AIが進化し、人間を超えるとき(シンギュラリティ)、「人はパンのみにて生きるにあらず」よろしく、生きがいを感じることに専念できるという考えと、多くの人が職を失って社会が不安定化するという考えがあるが、私は後者になるような気がしてならない。

 そんな不安定化する時代にあって、どうすれば自由を捨てず、権威にすがらない自分でいられるのか-を考えさせられる本だ。(祥伝社新書・820円+税)

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