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【短編小説の自由】保坂和志さん/円城塔さん

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円城塔さん「文字渦」…感情揺らす文字の変遷

 「日本語の特性をどうしても考えるんですよ。小説を日本語で書く必然性は? そう考えたときに浮かんできたのが『漢字』『かな』といった文字だった」

 新刊『文字渦(もじか)』(新潮社)に収められるのは「文字」をめぐる12の短編。純文学とSFを越境し、奇想に満ちた作品を紡ぐ作家らしい実験精神がみなぎる。

 昨年の川端賞を受賞した表題作も文字が主役だ。中国・秦の始皇帝が築いた陵墓の周りに埋められた1万体超の兵馬俑(へいばよう)。この兵士などの像を作った職人「俑」の足跡を虚実を取りまぜてつづる。法と秩序に重きを置く秦の文字は簡潔そのもの。でも文字は〈集団に与えられた恩寵(おんちょう)〉だと思う「俑」は別の文字体系をひっそりと残す。中国・唐の国家整備と漢字の標準書体である楷書(かいしょ)の進歩に触れる収録作「新字」と合わせ、文字の形成がもたらす支配と被支配の関係もえぐり出す。

 「ネット上の文字は今、大抵ユニコード(コンピューター用の文字の国際統一体系)ですよね。それは言葉の流通には便利だけれど、実はフォントがないものは書きにくくなっている。そういう制限を受けていることも忘れないほうがいい」。ルビが氾濫し、一幅の絵画のような奇怪な漢字も頻出するユニークな短編群は、人工知能(AI)が君臨する未来も見つめる。「漢字とかなの混成であるルーズな日本語はAIの処理には向いていない。ウェブ上の言葉もすごい勢いで変わっている」

 短編向きの作家、を自任する。「すぐに読めて落ちがある。そんなホラ話が好きだから(笑)」。執筆を通して、小説の妙味も改めて感じたという。

 「明快なメッセージを伝えたいのなら論文を書けばいい。読み手に何か錯覚を引き起こし、感情の浮き沈みをもたらす。そういう機能を持っているから小説は残っているんだな、と」

                   

【プロフィル】円城塔

 えんじょう・とう 昭和47年、北海道生まれ。平成22年に『烏有此譚(うゆうしたん)』で野間文芸新人賞、24年に「道化師の蝶」で芥川賞。『Self(セルフ)-Reference(リファレンス) ENGINE(エンジン)』で2014年に米フィリップ・K・ディック賞特別賞。

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