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【短編小説の自由】保坂和志さん/円城塔さん

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【短編小説の自由】
保坂和志さん/円城塔さん

保坂和志さん 保坂和志さん

 タイトルは興味深く見た仏ヌーベルバーグの巨匠、ゴダールの映画から。彼方(かなた)の時空を現在に呼び込む視線は、いくつもの死を優しく包む。そんな感触は、片目が見えなくなった愛猫との日々をつづる表題作にも流れる。「生きていることと死んでいることを分けて考えなくていい、というのがもっぱら関心の中心。生が途切れてしまったことを嘆くのは、生きている間のことをも否定しちゃう気がする」

 再生される記憶の密度は濃い。時系列や論理的整合性には目を向けず、自分の感覚を忠実に言葉に移す。

 「描きたいのは『この瞬間が確かにあった』という感触ですよね。記号や形容詞の世界に流れない、その人が確かにいたんだ、という感じ。時系列にこだわると、大事なものがこぼれてしまう」

 長い文章をひたすら読点でつなぐなど、叙述も年々自由になっている印象がある。「意味でなく感覚で取るための書き方。日本を抑圧感が覆う中、細かな正確性にこだわらない僕の振る舞いは一つのメッセージにもなる」

                   

【プロフィル】保坂和志

 ほさか・かずし 昭和31年、山梨県生まれ。平成5年に『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、7年に「この人の閾(いき)」で芥川賞。9年に『季節の記憶』で谷崎潤一郎賞などを受賞。25年に『未明の闘争』で野間文芸賞。

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