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石炭火力のCO2対策を加速 福島発のIGCC、地中貯留のCCS…日本が牽引するクリーン・コール技術の開発が進展

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石炭火力のCO2対策を加速 福島発のIGCC、地中貯留のCCS…日本が牽引するクリーン・コール技術の開発が進展

 福島県いわき市南部の沿岸地区、勿来(なこそ)。かつて首都圏のエネルギーを支えた常磐炭鉱の城下町で現在、世界最先端の石炭火力発電所の建設が佳境を迎えている。三菱商事パワーや三菱重工などの出資する勿来IGCCパワー合同会社が2020年の稼働を目指す石炭ガス化複合発電所(IGCC)だ。

福島県いわき市にあるIGCC勿来発電所10号機(旧実証プラント)。隣接地で20年の稼働を目指す最新鋭機の建設が進む。 福島県いわき市にあるIGCC勿来発電所10号機(旧実証プラント)。隣接地で20年の稼働を目指す最新鋭機の建設が進む。

 8月下旬、建設地ではIGCCの核となる設備「ガス化炉」周辺でクレーンを使い、配管などを取り付ける作業が進んでいた。骨組みの建屋内に立つ、高さ約16メートル、重さ約300トンの巨大な圧力容器は7月下旬に搬入したばかり。堀江嘉彦所長は「あの容器は積み重ね、最終的には高さ68メートルのガス化炉になる。主要設備が入り、徐々に試運転が近づいてきたので気が引き締まる」と話した。

勿来IGCCパワーガス化炉(右)とタービン建屋 勿来IGCCパワーガス化炉(右)とタービン建屋

 現在の石炭火力は細かく砕いた微粉炭を空気とともにボイラーで燃焼させ、発生した蒸気の力でタービンを回して発電する「1本足打法」。これに対し、IGCCは石炭を巨大な圧力容器内でガスに転換し、ガスタービンを回す。加えて、ガスタービンの排熱をボイラーに送り、蒸気を発生させて蒸気タービンも回す“2刀流”の発電で効率を大幅に向上する。

 すでに常磐共同火力の勿来発電所(いわき市)が出力約25万キロワットの実証機を商用運転しているが、建設中のIGCCは大規模火力並みの54万キロワットと2倍以上。発電効率は石炭を使う発電所として世界最高の48%となり、最新鋭の石炭火力よりも6%効率が高い分、発電で使う石炭が減り、二酸化炭素(CO2)排出量を約15%抑えられる「クリーン・コール技術」として国内外から商用化への期待は大きい。

出典:勿来IGCCパワー合同会社のHPを参考に作成 出典:勿来IGCCパワー合同会社のHPを参考に作成

 日本は石炭を利用した発電技術の開発で先行。その象徴ともいえる勿来IGCCパワーは19年末までに試験運転を始める予定だ。

 堀江所長は「東京オリンピックまでに送電を開始し、海外にも福島復興電源としてアピールしたい。世界の石炭火力の発電量が増える中で、高効率のIGCCを採用してほしい」と力を込める。

石炭の可採年数は石油・ガスの約3倍、発電費用はLNGよりも安く

 政府が7月に閣議決定した新たなエネルギー基本計画は、石炭を安定供給や経済性に優れた電源と評価したうえで、「高効率化・次世代化を推進する」と打ち出した。

 英石油大手BPの統計によると、化石エネルギーのうち石油や天然ガスは採掘が可能な年数は50年強だが、石炭は134年と約3倍。埋蔵地域も欧米やロシア、アジアなどに広く分布し、中東に偏在する石油などに対して地政学リスクが小さい。

出典:(※1)BP統計2018、(※2)OECD・IAEA「Uranium 2016」のデータをもとに「原子力・エネルギー図面集」から作成*ウラン確認埋蔵量とは130米ドル/kg以下で回収可能な埋蔵量(2015年1月現在) *世界のウラン需要量は約5.66万トン(2015年) 出典:(※1)BP統計2018、(※2)OECD・IAEA「Uranium 2016」のデータをもとに「原子力・エネルギー図面集」から作成*ウラン確認埋蔵量とは130米ドル/kg以下で回収可能な埋蔵量(2015年1月現在) *世界のウラン需要量は約5.66万トン(2015年)

 IGCCを活用すれば、火力で利用が難しい融点の低い石炭や褐炭などの低品位炭も使えるため、資源に乏しい日本のエネルギー安全保障に果たす役割も大きい。

 また、埋蔵量が多い石炭は将来的にも、低価格かつ安定供給が見込まれる。一方、石油や液化天然ガス(LNG)は国際情勢の変化による需給懸念などで価格変動が大きい。経済産業省の試算によると、30年時点の1キロワット時あたりの火力発電費用(CO2対策費含む)は石油が28.9円、LNGは13.4円。これに対し、石炭は燃料費の安さを反映し、12.9円に抑えられる。

 結果、政府は30年度時点の最適な電源構成に占める石炭の割合を26%に設定。将来的にも国内の4分の1をまかなう重要なエネルギーと位置付けた。

出典:資源エネルギー庁資料から作成 出典:資源エネルギー庁資料から作成

CO2を地層に封じ込め

 一方で、15年に採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」によって、石炭をよりきれいに使うクリーン・コール技術の開発・普及が大きな課題になっている。

 石炭が燃焼時に排出する、公害物質とされる硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)は処理技術が確立し、全国の発電所がほぼ導入済み。だが、焦点のCO2は、高効率のIGCCでも1キロワット時あたりの排出量が650グラムと、LNG火力(複合発電平均)を約70%上回る。

 このため原子力発電等により石炭火力への依存度が低い英国やフランスは将来の石炭火力の廃止を打ち出す。これに対し、ポーランドは発電電力量の8割を石炭に依存しているほか、脱原発を進めるドイツは4割を石炭が占め、原発の再稼働が進まない日本と同様に環境に配慮しつつ石炭の活用が欠かせない。

 対策としてIGCCと並び注目を集めるのが、排ガス中のCO2を分離・回収し、地中に長期間貯留する「CCS」だ。

 排ガスから化学反応を利用してCO2を分離し、高純度で回収。深さ1000メートル以上の地層に封じ込める。

 IGCCは石炭火力に比べCO2を回収しやすいとされ、CCSを組み合わせれば実質的なCO2排出をなくし、環境への負荷を大幅に和らげられると期待される。

提供:J-POWER(電源開発株式会社) 提供:J-POWER(電源開発株式会社)

 政府はCCSの20年ごろの実用化を目指し、北海道苫小牧での大規模実証を後押し。さらに、昨年、一般財団法人石炭エネルギーセンター(JCOAL)が米ワイオミング州と交わしたMOUに基づき、同州の石炭火力発電所で、川崎重工業の分離回収技術を実証する事業が18年度から始まっている。

 現在の分離・回収法は、排ガス中のCO2を「アミン」と呼ばれる化合物を含む水溶液で吸収するのに対し、川崎重工はアミンを含ませた特殊な固体を開発し、分離の温度を従来の摂氏100度から40度程度まで引き下げた。結果、分離回収によるエネルギー損失が無くなり、設備の簡素化含めCO2回収費用の低減が期待できる。

 米ワイオミング州の事業は21年度に設備を稼働し、1日10トンの分離・回収を見込む。商用化に必要な500トン規模も視野に入れており、事業を進めるJCOAL参事の原田道昭氏は、「大型化して導入が進めば、石炭で発電してもCO2排出を抑えられる」と説明する。

 国際エネルギー機関(IEA)の推計によると、世界の発電電力量のうち石炭は44%を占め、40年時点でも33%と比率は下がるものの使用量は増加する。電力需要の拡大が見込まれる新興国には効率の悪い発電所が多く、IGCCなど最先端の発電技術が普及すれば大幅なCO2削減につながる。

 世界の電力需要への対応と、温暖化対策を両立するには、日本発のクリーン・コール技術が鍵になりそうだ。

●クリーン・コール・デー実行委員会では、石炭利用の社会的認知と合意形成を図ることを目的に、クリーン・コール・デー(9月5日)を中心とした期間に一連の石炭広報活動をすすめています。詳しくはこちら

(提供 一般財団法人石炭エネルギーセンター)

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