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【明治の50冊】(26)正岡子規『歌よみに与ふる書』 心の叫びと実景、大衆短歌に道

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 「形を重んじ技巧や理屈をこねくり回すことで権威を誇った旧派歌人への疑問が子規にはあった。目を向けたのが、素直な表現を使い、人間の心の叫びやたくましさも宿す『万葉集』の精神だった」と神奈川大名誉教授の復本一郎さん。背景には明治という時代状況もある。「世界の列強と伍(ご)していく時代。大事なのは内輪で言葉の操りに終始することではない。勇み足の面もあったが、若くて可能性のある青年は強い野心を持ちなさい、という呼びかけでもあった」

 連載は波紋を呼ぶ。批判も少なくなく、掲載した新聞社の社主・陸羯南(くがかつなん)も激しすぎる筆致に気をもんだとされる。子規は親友の夏目漱石に書簡で打ち明けている。〈歌につきてハ内外共に敵にて候。外の敵ハ面白く候へども内の敵にハ閉口致(いたし)候。内の敵とは新聞社の先輩その他交際ある先輩の小言(こごと)ニ有之候。まさかにそんな人に向(むかっ)て理屈をのぶる訳にも行かず、さりとて今更(いまさら)出しかけた議論をひつこませる訳にも行かず困却(こんきゃく)致候〉

 もちろん収穫も大きかった。発表後、子規門下には賛同する若い才能が集う。その一人で、後に短歌雑誌「アララギ」を発刊する伊藤左千夫は詠んでいる。

 牛飼(うしかひ)が歌よむ時に

 世のなかの新しき歌

 大いにおこる

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