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【明治の50冊】(26)正岡子規『歌よみに与ふる書』 心の叫びと実景、大衆短歌に道

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【明治の50冊】
(26)正岡子規『歌よみに与ふる書』 心の叫びと実景、大衆短歌に道

(国立国会図書館蔵) (国立国会図書館蔵)

 美術のスケッチを手本にした「写生」を説いて俳句革新を推し進めた正岡子規は、やがて短歌の改革にも乗り出す。明治31年2月から3月にかけて、社員として筆をふるっていた新聞「日本」に発表した『歌よみに与ふる書』はその狼煙(のろし)だった。病に苦しみながら35年の短い生涯を駆け抜けた文豪の衝撃的な歌論は、大衆短歌への道を切りひらく。

 発表当時、子規は30歳。すでに脊椎カリエスと診断され、病床での生活を強いられていた。同じ年、こんな歌を残している。

 神の我に歌をよめとぞ

 のたまひし病ひに死なじ

 歌に死ぬとも

 病では死なない、歌に死ぬのならば本望だ-との覚悟がにじむ。だから、10回にわたり連載された『歌よみに与ふる書』にも、自身の余命を冷徹に見すえたような迫力と熱量が宿る。

 歌論は〈仰(おおせ)の如(ごと)く近来和歌は一向に振ひ不申候(もうさずそうろう)〉と書き起こされ、〈貫之(つらゆき)は下手な歌よみにて『古今集』はくだらぬ集に有之(これあり)候〉と断じる。当時、歌の聖典とあがめられていた平安期の勅撰和歌集『古今集』の歌を、駄洒落(だじゃれ)や理屈っぽいものが多いとこき下ろし〈これを真似(まね)るをのみ芸とする後世の奴こそ気の知れぬ奴〉と歌壇の主流派を批判した。一方、現存する日本最古の歌集『万葉集』や源実朝らの雄々しく、迫りくるような調べを持つ歌を絶賛。〈歌は感情を述ぶる〉として〈実景〉〈真心〉といった言葉を連ねた。俳句革新のときと同様、写実性を武器に短歌観の転換を迫ったのだ。

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