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【きのうきょう】ピアノのレッスン

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 奈良市 竹村けい子 64 無職

 今から54年前のこと。父が亡くなった新盆の夏、私は母に呼ばれた。父の遺影の前で「ピアノはお嬢さんの習い事。これからは読み書きそろばんが大事だから、ピアノはやめて習字はそのまま続け、そろばんを習いに行き」と言われた。

 そのころわが家では、大学を出て働き始めた姉、高校生の兄、そして末っ子の私はまだ小学5年だった。私は何より音楽が好きだったが、決して楽とはいえない家計の中での母の選択だったのだろう。私は母の言葉に従い、そろばん塾に通った。正座して習う習字やそろばんが苦手で、「お父さんが生きていたら」と何度思ったことか。

 後年、私は小学校の教師になり、どの習い事も役立ち母に感謝している。今年5月から54年ぶりにピアノのレッスンに通い始めた。思うように指が動かず四苦八苦であるが、一生懸命ピアノに向かっている私を、天国の両親は見守ってくれていることだろう。

 「きのうきょう」の原稿を募集しています。生活の中で感じたことを400字程度にまとめ、住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記して、お送りください。原稿は応募者の自作で、本欄のみへの投稿作品に限ります。宛先は〒100-8078か〒556-8660(いずれも住所不要) 産経新聞文化部生活面「きのうきょう」係。FAXは03・3270・2424です。採用分には2000円分の図書カードを差し上げます。

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