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【書評】文化部編集委員・大塚創造が読む 『焦土の刑事』堂場瞬一著 焼け野原に芽吹く男の矜持

『焦土の刑事』堂場瞬一著
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 当たり前のことだが、戦時下でも自然災害や犯罪は起こる。戦況が悪化していた昭和19年12月に東南海地震、20年1月に三河地震が発生。死者・不明者は計約3500人に上ったが、国民の戦意喪失を恐れた軍部の意向で被害実態はほとんど伝えられず、「隠された地震」とも呼ばれる。

 20年3月10日。死者数が推計で10万人を超える被害のあった東京大空襲の日、銀座の防空壕(ごう)で若い女性の遺体が見つかるところから物語は始まる。首に刃物による切り傷…他殺体。警視庁京橋署刑事で28歳の高峰は捜査に乗り出すが、何者かの命を受けた署長から意想外の指図が。「あれは空襲の被害者で、身元不明ということにする」-。

 空襲時の重要避難場所である防空壕で遺体が発見されながらもみ消されるくだりを読みながら、これは「隠された殺人」なのだと思った。

 高峰はその不満を、特高に本籍を置き、警視庁保安課で芝居台本の検閲などに当たる幼なじみの海老沢に漏らす。「警察が殺人事件の捜査をしないで済ませていいのか?」

 4月、防空壕でまた女性の他殺体が見つかる。連続殺人の可能性が高まる中、「本部の者」を名乗る男が遺体を引き取り、署長は「忘れろ」。さらに8月15日の終戦後、高峰が警視庁捜査1課に異動となった9月1日にも同様の遺体が見つかる。ついに始まった本格捜査でこの犠牲者の身元が判明し、ある劇団との接点が浮かび上がる。

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