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【編集者のおすすめ】『日本語は哲学する言語である』小浜逸郎著 新たな哲学の地平を切り開く画期的な試み

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【編集者のおすすめ】
『日本語は哲学する言語である』小浜逸郎著 新たな哲学の地平を切り開く画期的な試み

『日本語は哲学する言語である』小浜逸郎著 『日本語は哲学する言語である』小浜逸郎著

 日本語は曖昧で情緒的だといわれる。だから哲学には向かない言語だと思われてきたが、本当にそうだろうか。確かに、西洋哲学はデカルト以来、主客を分離し、世界を対象化することで科学技術を発展させてきた。その合理主義の論理は圧倒的であった。

 しかし、「われ思う、ゆえにわれあり」としたデカルトの主客二元論は、「われ」は疑えないとしたが、そのために「他」は最終的に知りえないという矛盾を抱えることになった。また、人間を理性的存在としたために、情緒を一段低いものとする「ロゴス中心主義」に陥ってしまった。

 これに対して、日本語は情緒を仲立ちとして人間に引き寄せ、この世界を理解しようとする。例えば、日本語では「ひと」と「もの」を分けて表現する。たとえば洗濯屋と洗濯機は、英語ではどちらも「Washer」だ。日本人は「もの」よりも「ひと」により関心を寄せ、自分以外の他者や世界を単なる対象と見るのではなく、関係論的に把握しようとする。動物やものも「象さん」「お豆さん」などと愛着から「さん」づけで呼ぶのは日本語だけだ。

 こうした日本語に独特の言語表現や日本語の文法構造を探求することで、これまでの西洋哲学の枠を超えてより普遍的な人間理解が可能になるはずだと著者は言う。

 本書は、日本語を日本語で哲学することで、新たな哲学の地平を切り開く画期的な試みである。日本語は哲学的にも奥の深い言語だったということがわかるはずだ。(徳間書店・2000円+税)

 徳間書店学芸編集部 力石幸一

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