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【ときを紡ぐ絵本 親子とともに】『おじいちゃんの ごくらく ごくらく』 残してくれた合言葉

鈴木出版の絵本「おじいちゃんのごくらくごくらく」
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 絵本には、生きていく喜びと同時に死や別れの悲しさをテーマにしたものもあります。

 平成18年に鈴木出版から刊行された『おじいちゃんの ごくらく ごくらく』(西本鶏介(けいすけ)・作、長谷川義史(よしふみ)・絵)は、大好きなおじいちゃんとの別れが描かれています。

 主人公のゆうたは、お風呂に入るのも寝るのも、いつもおじいちゃんと一緒。おじいちゃんはお風呂につかるとき、いつも「ごくらく ごくらく」と言います。そして、この言葉は「しあわせな きもちに なることだよ」と、ゆうたに教えます。今度の休みに山の温泉に行こうと約束したのに、おじいちゃんは病気になって仏様の国に行ってしまいます。「ごくらく ごくらく」が、別れの悲しみを乗り越え、家族とおじいちゃんをつなぐ合言葉となります。

 ユニークで表情豊かな長谷川さんの絵が、登場人物の心情を鮮明に映し出しています。

 この絵本を大学生と一緒に読んだとき、身近な人との別れや思い出を学生たちが語り出しました。

 アオイさんは、「私が6歳のとき、大好きな祖母が亡くなりました。それは、自分にとって、初めて死というものを意識したときだった…。母は私と一緒に泣きながら、おばあちゃんは心の中にずっといるよと言いました。母の言葉と、あのときの光景を今でも鮮明に覚えている」と。幼い子供なりに、死を受け止めていることがわかります。

 ナオさんは、「曽祖母は、お気に入りの飲み物を飲むとき必ず『カンロ、カンロ』と本当に幸せそうに笑ってた。私はずっと、その飲み物の名前だと思ってた。大きくなって、甘くておいしいという意味だと知った。今でもそれを飲むとき、『カンロ、カンロ』って言ってみたくなる」と言いました。

 子供たちは、何げない日常の中で、その言葉を使う人ごと、そのときの情景を丸ごと受け入れ味わっています。そして、その言葉が子供たちの心や体の中に残っていきます。

 作者の西本さんは、この本の中に、「この言葉がある限り、おじいちゃんのことを忘れず、いつでもおじいちゃんと過ごした至福の日々を思い出すことができます。(中略)いつの時代もこの言葉をたいせつにする人でありたいと思います」と記しています。

 人との関わりの中にある言葉の力と優しさを教えてくれる一冊です。(国立音楽大教授 林浩子)=次回は9月7日掲載予定

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