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【話の肖像画】小説家・真山仁(3) 坂東玉三郎「取材受けるなら真山に」

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 〈2年半で新聞社を辞め、フリーライターに転じたが、収入は激減した〉

 あのまま記者を続けていれば現実に安住し、小説家になる夢を捨てなければいけない。一度ゼロになった方がいいと思いました。記者を辞める前にローンで280万円の新車を買い、すぐに200万円で売って、当座の生活資金に充てることにしましたが、あっという間になくなりました。働かなくてはいけません。小説を書くため、生きるために、お金を稼ぎたかった。歌舞伎やミュージカルなどのエンターテインメント関連の広告記事を書きました。

 初期の頃、歌舞伎役者の坂東玉三郎丈にインタビューする仕事がありました。後に人間国宝になる天下の玉三郎です。取材時間はわずか30分。資料は現地で渡すということで予備知識はありません。歌舞伎も見たことがありません。専門的なことをうかがっても仕方ないと思いました。

 名刺を渡したときのことです。玉三郎さんにじっと見つめられました。30秒くらいでしょうか。これで目をそらしたら負けると思って私もじっと見つめて、「歌舞伎を見たことないんですよ」と。玉三郎さんは「新聞を読みながらいろいろ想像しているんです」と話してくれ、「ファストフードが日本をダメにしている」と言うんです。社会にものすごいアンテナを張っている方で、「人間が分からないと歌舞伎は分からない」とおっしゃる。私は、伝統的な日本をどう守るか、という記事を書きました。

 取材後に食事に誘われましたが、「私の仕事は食事をすることではないので」と断りました。単刀直入に言ったことを気に入ってくれたのかもしれません。その後、取材を受けるなら真山に、と指名してくれるようになりました。(聞き手 大竹直樹)

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