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【書評】ライター、編集者・南陀楼綾繁が読む 『春風コンビお手柄帳 小沼丹未刊行少年少女小説集 推理篇』小沼丹著 懐かしく、輝いて見える世界

『春風コンビお手柄帳 小沼丹未刊行少年少女小説集 推理篇』小沼丹著
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 読み終えて、まだ物語の中にいるみたいだった。

 井伏鱒二を師と仰ぎ、私小説や随筆の名品を残した作家・小沼丹(おぬまたん)。その生誕100年を記念して、2種類の著作集に未収録の少年少女小説を集めた2冊が刊行された。本書は推理篇(へん)だ(もう1冊は青春篇『お下げ髪の詩人』)。

 小沼には『黒いハンカチ』というミステリー連作があり、『風光る丘』という青春小説もある。しかし、両方の要素を持つ作品をこんなに多く書いていたとは知らなかった。

 表題作は、痩せたシンスケ君と太ったナカムラ君の仲良し中学生の周りに巻き起こる難事件を、シンスケ君のお隣に住むおちゃめでかわいいユキコさんが解決する連作。北村薫(本書にエッセーを寄せている)ばりの「日常の謎」ミステリーである。

 事件の話をしている途中で授業がはじまり、休み時間までお預けになる。そんなゆるやかなテンポが全編に漂っている。「いい思いつきね」「よせやい」などのやりとりも、くすぐったくて楽しい。

 もうひとつの連作「モヤシ君殊勲ノオト」は、いつも眠そうなモヤシ君ことワダ・マモル君が探偵役。こちらは、脅迫や殺人などが発生する。

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