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【話の肖像画】史家・渡辺京二(4) 堕落した善の追求は最悪を招く

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 〈「実現すべき目的の超越的絶対性、組織の大目的への献身、そのための自己改造、目的のためには強弁も嘘も辞さぬ点」で、近世の日本に宣教師を派遣した当時のイエズス会と「二〇世紀の共産主義政党」とは驚くほど性格・手法が一致している-と渡辺さんは近著『バテレンの世紀』で指摘している。大連からの帰国後、「時の流れ」から共産党に入党したものの、まもなく違和感を覚え、後に絶縁した渡辺さんだからこそつづれる一節である〉

 いまは共産主義といってもナンセンスであり、お話にはなりませんが、戦後の一時期の大問題はマルクス主義や共産主義をどう批判し、乗り越えてゆくか、でした。イバン・イリイチというウィーン生まれの思想家は「最善の堕落は最悪である」といった意味のことを述べています。人のためによかれ、と思って善を追求する。しかしそれが堕落したさいには最悪の結果を招く。その姿はまさに共産・社会主義体制であり、旧ソ連時代にソルジェニーツィンが描いた『収容所群島』の世界です。

 マルクス主義者によると、人類の本当の歴史は資本主義社会の後に訪れる共産主義社会から始まります。だから共産主義者にならねば本当の人間ではなく、本当の人間の社会にするためには手段を選ばないまでに過激化しました。その先例といえるのが「人間ならばカトリックでなければならない」との理念に基づく「バテレンの世紀」の布教活動です。

 マルクスは資本主義を解剖することについては優れた仕事を残しましたが、「その後こうなる」という点では大間違いをしでかした人です。たとえば現代にマルクスを蘇(よみがえ)らせて北朝鮮に案内し、「あなたの教えのおかげでこんな国ができました」と説明したら、肝をつぶし、「冗談じゃない」と大声をあげることでしょうね(笑)。(聞き手 関厚夫)

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