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【話の肖像画】史家・渡辺京二(2) 失われた「内発的維新」

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【話の肖像画】
史家・渡辺京二(2) 失われた「内発的維新」

史家・渡辺京二氏 史家・渡辺京二氏

 「歴史のif」ではありませんが、幕末、薩摩・長州両藩を中心とした倒幕勢力ではなく、大政奉還後の旧幕府勢力が政権を担当する可能性もありました。その場合、西洋化を推進するにしても伝統と断絶した急激な「維新」ではなく、さまざまな伝統に基づいた改革を可能にしたのではないでしょうか。

 夏目漱石は講演「現代日本の開化」で、維新後の開化は「内発的」な、内部から自然に発展していったものではなく、無理押しに押され、否応(いやおう)のなかった「外発的」なものである-と断じました。前述の旧幕府勢力による漸進的な改革では、「非西欧初の近代化の成功者」との称号は得られなかったかもしれません。しかし、それは漱石のいう「内発的な開化」により近い内容となっていたことでしょう。

 〈『逝きし世の面影』の執筆意図について、渡辺さんは「自分のちっぽけな『愛国心』を満足させたいわけではない」とも同書のなかでつづっている。その一方で「僕は国家というものに対してはダブルスタンダードなのです」と語る〉

 反国家主義には嫌悪を感じます。現代社会では、国民として国家に帰属し、現実的な利害をともにしなければ生きてゆけないし、治安や医療をはじめ、さまざまな面で国家のお世話にもなっているわけですから。また、国連に協力するために自衛隊を海外に派兵するのは当然だと思います。それを拒否するのは、エゴイズムにほかなりません。

 ただ、国家を超え、国家に依存しない人間の生き方を追求したい気持ちもあります。決して「ギブ・アンド・テーク」の論理ではなく、何もしてくれない人にも手をさしのべ、その逆についても素直に受け入れることができる。そんな、自立しながらも依存し合う、国家を超えた関係をどうすればつくれるのか。人類の普遍的なテーマはこのことに尽きると考えています。(聞き手 関厚夫)

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