産経ニュース

【話の肖像画】史家・渡辺京二(2) 失われた「内発的維新」

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【話の肖像画】
史家・渡辺京二(2) 失われた「内発的維新」

史家・渡辺京二氏 史家・渡辺京二氏

 〈『逝きし世の面影』。訪日外国人が残した膨大な史料にあたり、幕末~明治前期における古き良き日本人像を描出・論考したこの大著は、平成17年に平凡社ライブラリーに収められて以来、38刷・約16万部を数えるロングセラーとなっている〉

 われわれにとって江戸時代は、帰りたくても帰れない異文化です。茶の湯をはじめ、表面的には「江戸」を伝える文化は多いけれども、現代人と江戸を生きた人たちとでは心の構造が違っています。

 「江戸時代はよかった」と『逝きし世の面影』で主張したかったわけではありません。異文化としての江戸時代は、現代を相対化する鏡になります。つまり、現代の価値観や社会は唯一無二ではないということを教えてくれるのです。それに気付くことが最も大事だと考えています。

 江戸時代の幕を引き、今年「150年」を迎えた明治維新については「緊急避難」と考えています。軍事力を背景に欧米から強烈なプレッシャーがあった。ところが、徳川幕府は制度疲労を起こしており、朝廷や藩との間で権力が多重構造化している。早急に事態を打開しなければ国が滅びる-。そんな危機感が明治維新をもたらし、その結果として誕生した強力な中央政権がさまざまな伝統を断絶する形で「上からの近代」を導入してゆきました。

 ここで強調したいのは「もうこんな生活はたまらない」という庶民の声が日本中でわき起こったために明治維新が起きたわけではないということです。

続きを読む

「ライフ」のランキング