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【書評】編集者、映画批評家・高崎俊夫が読む 『もう言っとかないと』中村メイコ著、古舘伊知郎聞き手 今の芸能界に喝

『もう言っとかないと』中村メイコ著、古舘伊知郎聞き手
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 2歳8カ月で銀幕デビューを飾り、元祖天才子役として舞台、映画、ラジオ、テレビで活躍、芸歴82年という驚異的なキャリアを誇る女優、中村メイコの回想録である。

 聞き手を務める古舘伊知郎は一問一答の形式を採らず、彼女の奔放自在な語り口を生かしながら、昭和から平成に至る時代を無手勝流に生きたこの女優のユニークな生涯を浮き彫りにしている。

 戦前だけでもエノケン(榎本健一)、古川ロッパという昭和を代表する2大喜劇人と舞台に立ち、3歳で菊池寛と2人きりでディナーを体験、徳川夢声、ブルースの女王、淡谷のり子と戦地へ慰問に行くなど、破天荒なエピソードがさらり、次々と披歴(ひれき)されるので驚かされる。

 戦後も、たとえば三木鶏郎(とりろう)の伝説のラジオ番組『日曜娯楽版』で、後に伴侶となる作曲家、神津善行、放送作家の永六輔と出会うくだりで興味深い逸話が紹介される。メイコと神津の婚約を知って失意の涙にくれる永を慰めようとメイコが父で作家の中村正常に相談し、永に伝えた言葉が「上を向いて歩こう」の歌詞のヒントになったとも。

 10代から親しかった黒柳徹子がラジオドラマに初出演した際、周囲から「中村メイコのまねをするな」と言われたエピソードからは、戦後の芸能史における中村メイコの特異な位置がおのずと浮かび上がってくる。

 物心つく以前に、演じることが第二の天性となってしまい、「プライベートで芝居をしていて、仕事では役作りをしない」と自己分析する慧眼(けいがん)ぶりはさすがである。

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