産経ニュース

【書評】EXILE/三代目J Soul Brothers・小林直己が読む 『ペインレス 上・下』天童荒太著 「痛み」が真実へ導く

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【書評】
EXILE/三代目J Soul Brothers・小林直己が読む 『ペインレス 上・下』天童荒太著 「痛み」が真実へ導く

『ペインレス(上)』天童荒太著(新潮社・1500円+税) 『ペインレス(上)』天童荒太著(新潮社・1500円+税)

 表現者として日々、芝居や踊りに取り組んでいる僕の原動力は「怒り」だ。人気の多寡で評価が左右される芸能界には、努力や才能だけではどうすることもできないことが少なくない。時には、まるで僕自身の存在が否定されているように感じることさえある。その時の悔しさや不満は自分自身への「怒り」に転化し、同時に心の「痛み」を伴って襲ってくる。でもいまは、その2つこそが僕を成長させる両輪で、前進させる原動力だと思っている。

 本書を一読して、これは僕の物語でもある、と感じた。他人への共感を持てず、心の痛みを感じない美貌の麻酔科医と、海外出張中に理不尽なテロに遭って痛覚を失った青年。心の痛みと肉体の痛みを持たない2人の男女は、互いが感じることがないはずの感覚を通して自らを見つめ直していく。僕はいつしか作品世界が自分を映す鏡であるかのように、自分自身と向き合うような感覚を抱いていた。

 女医とその患者という立場の彼らは、人間が苦しみ悶(もだ)える痛みを性愛の快楽を交わす中で、どこまでも貪欲に求め、悲痛なまでに意識的であろうとする。女医が口にした「痛みが人間の本質だと思ったからです」との言葉には、理解者を見つけたような気がしてうれしく思った。

続きを読む

「ライフ」のランキング