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【虫撮り人】2 オオムラサキ、23区では「絶滅種」 羽の傷は短い夏を生き抜いた証し

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【虫撮り人】
2 オオムラサキ、23区では「絶滅種」 羽の傷は短い夏を生き抜いた証し

短い夏の終わり、オオムラサキの羽は傷が目立ちだす=武蔵村山市(佐伯元行さん撮影) 短い夏の終わり、オオムラサキの羽は傷が目立ちだす=武蔵村山市(佐伯元行さん撮影)

 オオムラサキが昭和32年に日本昆虫学会で日本の国蝶に選ばれたとき、選考条件の一つは「全国に分布し簡単に見られる種であること」だったそうだ。

 今では夢のような話で、オオムラサキは現在、環境省の準絶滅危惧種に指定され、東京ではすでに「絶滅種」のカテゴリだ。23区で見つけるのはまず難しく、荒川区などで撮影された例はあるものの、それらの多くは人が飼育し放蝶したものと考えられるという。

 昆虫写真家で保育園長の佐伯元行さん(59)が今回、撮影に出かけたのは、東京都武蔵村山市の都立野山北・六道山公園。狭山丘陵の自然と里山環境を保全した公園で、里山を好む昆虫たちの宝庫だという。

 東側の駐車場で山歩き用の靴に履きかえ、いざ山へ、と思ったら、歩き出してすぐ、「あ、いたいた」と佐伯さんが上を見た。

 斜面のクヌギの古木に止まった。青紫色の美しい柄。オオムラサキのオスだ。一回り大きいメスもいる。

 樹液に群がるクワガタやスズメバチにもひるまぬどころか、羽を震わせ追い払おうとする気の荒さだ。近くを飛ぶと羽音が耳に届くほど大きい。羽ばたいては滑空する飛び方は「優美」というより「勇壮」だ。

 オオムラサキがいるのは、樹液豊富な木と幼虫が葉を食べるエノキなどがある雑木林だ。「幼虫は落ち葉の下に潜って越冬するので、落ち葉掃きなどの管理が行き届いた公園にはいません。高尾山頂付近やあきる野市内でも撮影できるはず」と佐伯さん。

 ただし、オオムラサキの夏は短い。成虫の多くは8月半ば頃までに交尾、産卵を終えて死んでいく。

 撮影中、羽がボロボロに傷ついた個体を何匹も見た。「他の虫などと競い合って、夏を精一杯、生き抜いた証です」と佐伯さんは言った。(石塚健司)

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