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【書評】文芸評論家、早稲田大学教授・高橋敏夫が読む 『星夜航行 上・下』飯嶋和一著 歴史小説の新たな起源に

『星夜航行 上・下』飯嶋和一著
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 秀作、労作、傑作と書いて、まだ足りない。最大級の賛辞を贈ったとしてもなお、この作品が現出させた人と歴史の確かな高みにとどくまい。

 雑誌連載に5年、手直しに4年、計9年が作品完成に費やされたという。新たな試みへ果敢に、執拗(しつよう)に挑みつづける作家、飯嶋和一らしい。

 時は16世紀の後半から17世紀の初頭まで。戦国時代末期の日本から朝鮮国、明国におよぶ東アジアが物語の主なステージだ。世界分割を夢みるポルトガル、イスパニア両帝国の影響もすでに無視できないものとなっていた。

 徳川家康に弓を引いた逆臣の遺児、沢瀬甚五郎は、家康の嫡男・信康の小姓となるが、家康による信康謀殺の後、出奔。座禅を組む甚五郎に、苦しむ民を救う観世音菩薩の姿が静かにおりてきた。

 堺、薩摩の山川(やまがわ)港、博多、長崎と移動し、自由な交易に携わる海商人(うみあきゅうど)に成長。しかし豊臣秀吉の無謀極まりない朝鮮侵攻と明国征服の企て(文禄・慶長の役)が、甚五郎にも容赦なく襲いかかる。

 何が起きているか確かめるのが責務と語る商人に伴い、朝鮮に渡った甚五郎を待っていたのは、予期せぬ、否、ひそかに望んできた生の転回だった。権力者に踏みにじられてきた民を救うために闘う甚五郎の前に、次々ときらめく仲間があらわれる-。

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