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【話の肖像画】星稜高野球部元監督・山下智茂(3)箕島との死闘、尾藤さんは笑ってた

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 チームは延長で2度リードしたが、そのたびに追いつかれ、延長十八回、サヨナラ負け。でも、たとえ引き分けたとしても、翌日の再試合で勝つ力は残っていなかった。その試合はナイターだったのに、再試合は朝に設定されていた。ベンチでそれを知った途端、がっくりですよ。

 試合中、不思議に思ったことがあるんです。僕はガンガン怒っている。ところが、相手ベンチの尾藤さんはいつも笑っている。なんでかな、と思っていました。後に自分の顔を鏡で見て、ハッと思いました。尾藤さんは選手を信じ、許すことのできる監督なんだなと思いました。

 勝つ野球をやろうとは思っていたけど、僕は育てる野球はしていなかったな、と痛感しました。それからいろいろな本を読んで勉強しました。あの試合では、尾藤さんに多くのことを学びました。

 このときのチームは、実は弱かったんです。飛び抜けていい選手はいなかった。でもチームのまとまりが抜群に良かった。そんなチームが優勝チーム相手にあそこまでいった。それが高校野球なんだなと思いました。試合後のインタビューで、勝った箕島の選手は泣いているのに、うちの選手は笑っていた。それだけ箕島の選手には重圧があったのでしょうし、うちの選手には充実感があったのでしょう。

 宿舎に帰り、みんなで風呂に入りました。ベンチ入り選手一人一人の背中を洗って、流してあげた。そのうち、誰かが校歌を歌い始め、やがて大合唱に。みんな涙を流しながら歌いました。勝つだけがすべてではないことを学んだ。監督生活38年で「最高の試合」でした。(聞き手 江目智則)

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