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【主張】iPS治験 再生医療の総合力向上を

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 脳神経系の難病であるパーキンソン病患者の脳に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った神経細胞のもとを移植する臨床試験(治験)を京都大学が始める。

 学内審査と国の承認を経て、京都大が計画の詳細を発表した。

 さまざまな組織や臓器の細胞に分化できるiPS細胞の臨床応用では、これまでに理化学研究所などにより目の病気の患者に対する手術が臨床研究として実施され、今年6月には重い心臓病患者を対象とする大阪大の臨床研究が国に承認された。

 リスクの大きい脳神経や心臓の病気で、臨床応用に取り組む京大や阪大の姿勢を評価したい。

 京都大の山中伸弥教授は、「難病患者を救いたい」という思いからiPS細胞を開発した。再生医療の切り札と期待され、多くの患者が「一日も早い実用化」を待ち望んでいる。

 今回の治験は、臨床研究から一歩進んで、より実用化に近い段階と位置づけられる。iPS細胞による再生医療は、本格的な実用化に向けて大きく動き出す。

 日本の医療、製薬は基礎研究のレベルは高いが、臨床研究や実用化段階で欧米に大きな後れをとってきた。iPS細胞に対する期待感が、臨床研究や治験に対する患者、国民の深い理解につながることは、日本の医学薬学界全体にとっても大きな意義がある。

 だからこそ、性急に成果をあげることにとらわれず、安全性に最大限に配慮して着実に前進させてもらいたい。

 目の治療で患者への移植手術が実施されているとはいえ、長期的な安全性の検証はこれからだ。この段階で阪大が心臓、京大が脳への移植に取り組む。

 医師や研究者の思いが「患者を早く救いたい一心」であるとしても、国の承認など、iPS細胞と再生医療をめぐる大きな流れからは、「成果や経済効果にとらわれてはいないか」という危惧も浮かんでくる。

 再生医療は、医療、製薬全般に革新をもたらす可能性がある。基礎から応用まで裾野は広く、未知の領域を一歩一歩、確かめながら進む堅実さが求められる。欧米で実績がある胚性幹細胞(ES細胞)にも目を配りたい。

 再生医療の総合力を高める視点を、研究者と医薬行政、そして国民が共有する必要がある。

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