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【話の肖像画】星稜高野球部元監督・山下智茂(1) 5打席敬遠…「力がなくて負けた」

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【話の肖像画】
星稜高野球部元監督・山下智茂(1) 5打席敬遠…「力がなくて負けた」

星稜高野球部元監督・山下智茂さん(江目智則撮影) 星稜高野球部元監督・山下智茂さん(江目智則撮影)

 うれしかったこともあります。松井が打席で打つ構えで投球を待っていたこと。相手が勝負するつもりがないなら、打つ構えをしなくてもいいと考えてもおかしくはない。松井はふて腐れるわけではなく、一球一球、打つ構えでボールをよく見ていたし、静かにバットを置いて一塁へ向かった。「人間的に成長したな」と思いましたね。

 試合後、ダッグアウトでバットなどの用具の片付けをしていると、松井が(投手の)山口(哲治)と2人でやってきて「監督さん、すみませんでした」と謝ったんです。

 実は、松井らがこの年の2月、僕の誕生日に、ネクタイとカフスボタン、花束をプレゼントしてくれた。そのとき松井が「こんなものですみません。夏はもっと大きなプレゼントをします」と言ったんです。もちろん「甲子園優勝」。それができなくなったことを謝ったわけですが、その言葉を聞いたとき、スケールの大きな選手になってくれた、と感動しました。自分が悔しいだろうに。そのことが、指導者として大きな財産になりました。(聞き手 江目智則)

                   

 【プロフィル】山下智茂(やました・ともしげ)

 昭和20年、石川県生まれ。県立門前高、駒沢大を卒業後、42年に星稜高の社会科教諭と野球部監督に就任。野球部を春11回、夏14回甲子園に導き、箕島高との延長十八回の死闘や松井秀喜への5連続敬遠など数々の名勝負を繰り広げた。甲子園の最高成績は平成7年夏の準優勝。17年、38年間務めた監督を退いた。現在は星稜高野球部名誉監督、金沢星稜大学特任教授。甲子園歴史館顧問。

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