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【文芸時評】8月号 早稲田大学教授・石原千秋 正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと

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 芥川賞発表の日はゼミ生と打ち上げコンパだった。ゼミ生の一人がすぐにスマホで調べた。芥川賞は高橋弘希「送り火」、直木賞は島本理生「ファーストラヴ」に決まった。高橋弘希はデビュー作の「指の骨」に賞を出すべきだったし、島本理生も遅すぎる受賞だった。それからも文学の話。僕が「文学研究のポリティカルコレクトネス(政治的正しさ)は嫌いだ」と言ったら、U君がすかさず「文学は体制を批判するものなのに、体制から文学を批判してますよね」とうまいことを言った。この時評にも何度か書いたが、常々「正しいことならバカでも言える」と唱えている僕が「それ、もらった! 今度の文芸時評に書こう」と言ったら、「そう言うと思った」と別の学生。読まれている。

 北条裕子「美しい顔」が、「参考文献」を付けるのを怠ったとか、いや「盗作」だ「剽窃(ひょうせつ)」だと話題になっている。「群像」に掲載した講談社が北条裕子を守るのは当然だし、たとえば北条裕子が参照した石井光太『遺体』の新潮社が攻めるのも当然だ。そうでなければ、誰もこれらの出版社から本を出そうとは思わないだろう。比べてみれば、たしかにいくつかの表現は似すぎていて、「これはまずいな」と思う。しかし、だからといって僕の「美しい顔」の評価は少しも変わらない。

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