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【書評】批評家・西村幸祐が読む『日本国史 世界最古の国の新しい物語』田中英道著 無味乾燥な歴史観が一変、GHQの洗脳実態まで明らかに

日本国史
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 ここ数年、古代史を中心に精力的な研究成果を発表している著者の新刊。古代から近現代まで通史の形式を取っているが、一気に読了できる〈物語〉である。平易な言葉で語られる〈国史〉は、冒頭で《日本の歴史には、最初から国家があったと考えられるから》と極めて斬新なマニフェストが掲げられている。

 斬新であると同時に挑戦的なのは、著者が美学者、美術史家としてルネサンス研究の世界的な第一人者であることと無縁ではない。日本の歴史学がいまだに旧態依然とした唯物史観的観念から逃れられない欠陥を抱える一方で、美術史、美学の分野では、すでに20世紀の後半からマルクス主義の影響は希薄になっていたからだ。

 例えば、グスタフ・ルネ・ホッケは〈マニエリスム〉という様式を時代を超えて美術史に何回も現れる概念として捉え、進歩主義史観を否定した。ホッケの『迷宮としての世界』は昭和41年、『文学におけるマニエリスム』も46年に邦訳されていた。

 《「古代」「中世」「近代」などと時代区分するのは、進歩史観に毒された間違いです。日本の歴史は一貫して天皇がおられるように、過去と現代を分ける必要はないし、そのようなことはできないのです》と言い切るように、本書を読むと自然と日本人の歴史が理解できる。それは、日本人が本来持っていた自然観、宗教観、国家観を再確認することであり、学校で学ばされる無味乾燥な歴史観を一変させられる。大宝律令がいかに優れたもので日本が古代から法治国家であった意味まで生きた知識として学べるのだ。

 本書の白眉はやはり文化を扱った部分で、奈良時代の精神性の豊かさをギリシャ、ルネサンスの時代と同じく《豊かな建築物がつくられ》豊かな精神性が生まれたと言う。縄文から続く日本の歴史を繙(ひもと)けば、高天原が関東にあったという見解も奇異には思えない。本書はこのように、古い歴史観で縛られた歴史学の常識が、全く常識でないことを教え、敗戦後のGHQの歴史洗脳の実態まで明らかにしてくれる。(育鵬社・1600円+税)

 西村幸祐(批評家、関東学院大学講師)

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