産経ニュース

【本ナビ+1】俳優・寺田農 何も知らない〈私〉を知る 永田和宏著『知の体力』

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【本ナビ+1】
俳優・寺田農 何も知らない〈私〉を知る 永田和宏著『知の体力』

俳優・寺田農さん 俳優・寺田農さん

 赤瀬川原平が『老人力』というとてつもない作品を出版したのが1998年。このベストセラーにあやかってか、その後次から次へと『なんとかの力』『なんとか力』などというタイトルの本が出されたが、ことごとくつまらないモノで私は嫌いだ。

 だが、今回の『知の体力』は、そんなあやかりものとはまったく異なる。著者の永田和宏は、細胞生物学者で京都大学名誉教授、また、京都産業大学教授であるとともに、宮中歌会始の選者も務める代表的歌人である。

 「知の体力」は若者へのメッセージになるようなものを、との求めに応えた新聞連載で、それが新書としてまとめられた。答えがひとつしかない、学習としての初等中等教育と違って「制度的には、最後の教育機関である」大学では何を教えたらよいか-。永田の授業では教科書は使わない。「わかっていること」を教えるよりは、「わかっていないこと」を教えることこそが大学における教育、講義の本来の姿だと。

 そして、「何も知らない〈私〉を知ること」にこそ学問、読書の意味があるという。また、大学とは「企業、社会が求める人材」の供給場所ではないとも。学生自身が何かを求め、考えなければ大学の意味もその必要性もない。

 これらを歌人としての豊かな言葉と細胞生物学者としての綿密な観察の裏付けによって諄々(じゅんじゅん)と語りかけるのだ。

 大学受験の勉強に汗を流している若者に、ぜひとも読んでほしい、君は何のために大学を目指すのかと。

 囲碁の藤沢秀行名誉棋聖は、よく「無悟」という言葉を揮毫(きごう)していた。「囲碁が分からないことが分かった」ということなのである。(新潮新書・760円+税)

続きを読む

このニュースの写真

  • 俳優・寺田農 何も知らない〈私〉を知る 永田和宏著『知の体力』
  • 俳優・寺田農 何も知らない〈私〉を知る 永田和宏著『知の体力』

「ライフ」のランキング