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【編集者のおすすめ】西部邁、宮崎正弘著『アクティブ・ニヒリズムを超えて』 「戦後の病理」超克を語り合う

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西部邁、宮崎正弘著『アクティブ・ニヒリズムを超えて』 「戦後の病理」超克を語り合う

『アクティブ・ニヒリズムを超えて』西部邁、宮崎正弘著 『アクティブ・ニヒリズムを超えて』西部邁、宮崎正弘著

 行動的積極的虚無主義-本書のタイトルである「アクティブ・ニヒリズム」を翻訳するとこうなる。西部邁氏が10代に愛読したアンドレ・マルローの、何もないニヒルな気分、それでもひたすら何かのアクションへ自分を駆り立ててしまえという衝動に応えた言葉だと告白している。いわば、西部氏の60年安保闘争への参加の契機となった思想的背景である。

 最初は三島由紀夫がマルローに憧れ、最後はマルローが三島に憧れた。その三島の晩年、近くにいたのが宮崎正弘氏だった。

 本書では、言論界の泰斗による、安保条約、国防論、国家、民族、日本のあり方、日本人と文化等々にまつわる「戦後の病理」を行動的ニヒリズムで超克できるかを、縦横無尽に語り合っている。

 哲学的アプローチの一例が、日米安保条約改定から半世紀以上の中で最大の衝撃は、連合赤軍事件と三島由紀夫自決事件で、これ以降、左翼はサヨクと化し、言葉には死を賭した責任がつきまとうようになった。人類は、「死の意識」「死の想念」からの逃避としての「戦争のない平和な想念」に永遠に身を浸すことは不可能である。

 人は死ぬものであり、国家をめぐる政治的な死でさえいつ訪れないともかぎらないことを忘れてはならない。

 結局、戦後日本の知識人は、死の想念から逃れたのだ。だから、死を賭した三島事件は衝撃だったのだ。今こそ日本人に染み付いた平和主義を疑わなければならない。(文芸社・720円+税)

 文芸社企画編集室編集長 佐々木春樹

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