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【編集者のおすすめ】『老後の資金がありません』垣谷美雨著 貯金激減の50代夫婦…小説の随所に生活のヒント

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【編集者のおすすめ】
『老後の資金がありません』垣谷美雨著 貯金激減の50代夫婦…小説の随所に生活のヒント

『老後の資金がありません』垣谷美雨著 『老後の資金がありません』垣谷美雨著

 「あなたの老後の資金は安心ですか?」。この問いに、心からYESと答えられる日本人はどれくらいいるのだろう。そんな現代人のリアルな不安に寄り添ってくれる一冊がこの小説だ。

 主人公の篤子は53歳。2人の子供は独立し、夫婦で1200万円の貯金があり、文字通り「老後は安泰」かと思っていた直後…娘の派手婚で500万円、舅(しゅうと)の葬式やお墓代で400万円を使い、その上夫婦そろって失職、姑(しゅうとめ)との同居も重なるなど、次々と“金難”が降りかかる。コツコツためてきた老後資金は一気に激減し、今や貯金残額は300万円を切ってしまう!

 「50代の夫婦で、それだけしか貯金のない人って、日本人の何割くらいいるのだろう。ついさっきのガレットの店で払った代金がもったいなく思えてくる」

 篤子がこぼすお金への不安に共感する読者は多いだろう。誰もが身近に感じる老後、お金、夫婦の問題を、あらゆる角度から小説に描いてきた著者の魅力が、本作でいかんなく発揮されている。

 今春、初版1万2000部で発売され、たちまち9刷累計16万部に。作家、室井佑月氏は解説で「面白く、ためになる、素敵(すてき)な小説だった。あたしはずっとこういう本が読みたかった」と激賞する。

 随所に生活の不安に効くヒントが詰まっており、暗くなりがちなテーマでも爽快な読後感を味わわせてくれる。家計をやりくりする主婦はもちろん、漠然と将来に不安を抱く若年層にもお薦めしたい。(中公文庫・640円+税)

 中央公論新社書籍編集局 文芸編集部・石川由美子

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