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【昭和天皇の87年】ドイツ人医師がみた皇太子一家の「本当の幸福な家庭生活」

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【昭和天皇の87年】
ドイツ人医師がみた皇太子一家の「本当の幸福な家庭生活」

画=井田智康 画=井田智康

 なお、聡明かつ気丈な性格で知られる節子皇太子妃(のちの貞明皇后)は、わが子を愛しつつも天皇家の立場を重んじ、過度に接することを自制していた(※1)。そのことがのちに、母子関係に微妙な軋轢(あつれき)をうむことになるのだが、それは後述する。

 一方、父の嘉仁皇太子は前年12月から沼津御用邸に滞在しており、裕仁親王や雍仁親王とふれ合う機会が多かった。昭和天皇実録には、両親王が近くの山でツクシやタンポポを摘み、皇太子にあげる様子なども書かれている。

 自身は病弱だった皇太子は、子供たちが元気に育っていることが、よほど嬉しかったのだろう。連日のように会おうとするため、東宮侍従長の木戸孝正から「あまり繁々(しげしげ)と会うのはよろしくない」と諫言されたほどだ。この年の1月には、沼津御用邸に参邸した連合艦隊司令長官の東郷平八郎らに両親王の写真を与え、《以後、皇太子はしばしば賜謁者等に両親王の御写真を賜う》(1巻73頁)

 皇太子一家が沼津にそろった3月31日、皇太子は東宮医務顧問のドイツ人医師ベルツに、3親王を診てほしいと頼んだ。

 ベルツは日記に書く。

 「皇子たちに対する東宮の、父親としての満悦ぶりには胸をうたれる。まず最初、先日拝見したばかりの、一番末の皇子を見舞う。誕生後八十日にしては立派な体格、見事な発育で、お母さん似だ。上の二人の息子は現在、ほぼ四歳と二歳半になるが、まことに可愛らしい。行儀のよい、優しくて快活な坊やである。長男の皇子は穏やかな音声と静かな挙止とで、非常に可愛らしく優しいところがある。次男の皇子はいっそうお母さん似で、すこぶる活発で元気だ。(中略)今では東宮一家は、日本の歴史の上で皇太子としては未曾有のことだが、西洋の意味でいう本当の幸福な家庭生活、すなわち親子一緒の生活を営んでおられる」--

(社会部編集委員 川瀬弘至 毎週土曜、日曜掲載)

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