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ミルチャ・カントル展 不確かな社会と個の存在

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ミルチャ・カントル展 不確かな社会と個の存在

ミルチャ・カントルと、自らの指紋で有刺鉄線を思わせるドローイングを描いたガラスの屏風「呼吸を分かつもの」(部分)、2018年 Photo:?Nac?sa & Partners Inc./Courtesy of Fondation d’entreprise Herm?s. ミルチャ・カントルと、自らの指紋で有刺鉄線を思わせるドローイングを描いたガラスの屏風「呼吸を分かつもの」(部分)、2018年 Photo:?Nac?sa & Partners Inc./Courtesy of Fondation d’entreprise Herm?s.

 「共産主義の独裁政権下でデモといえば、リーダーを敬い、政権を応援するための行進でした。後年、フランスに移って初めて、私はデモが何かに抗議し、反対の態度を示すための行動であると知ったのです」。自分を取り巻く社会や価値観は、不変ではない。時間がたつとともに、民主主義社会におけるデモでさえ、「何か幻想めいたものに見えてきた」と語る。

 作品の中で、人々が持つ透明なプラカードに、具体的な問題意識や理想を重ねて見る人もいるだろう。ただし、カントルの表現にはいつも余白があり、詩的な魅力がある。近年、美術館での個展や国際展への参加を通じて、国際的評価を高めている作家の一人だ。

 人々が何を訴えているかは、この作品において重要ではない。透明のプラカードの奥に見える個々の人間に、カントルは信頼を寄せる。不確かで複雑な社会だからこそ、個の存在が大切なのだ。「私たちの存在、私たちがそこに『いる』ことが、革命的な力を持っている。私が表現したのは、あなた自身が、何かしらの変化を起こせる存在だということ」

 他に、ガラスの屏風(びょうぶ)とたくさんの風鈴を組み合わせたインスタレーション(設置芸術)など2点を展示。22日まで、無休。入場無料。問い合わせは(電)03・3569・3300。

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