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芥川賞候補作「美しい顔」、既刊本と一部記述が類似 震災への向き合い方と表現のあり方問う

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芥川賞候補作「美しい顔」、既刊本と一部記述が類似 震災への向き合い方と表現のあり方問う

「美しい顔」の記述と参考文献の類似例 「美しい顔」の記述と参考文献の類似例

 一方、既刊本の筆者らは法的問題とは、別の問題があるとする。『3・11 慟哭の記録』の編者である金菱清(かねびし・きよし)・東北学院大教授は出版元を通じ、「美しい顔」には無神経な取材をするマスコミへの怒りを表現した部分など、十数カ所の類似部分があると指摘。「すぐに、(特定の人の)モチーフを採ったものだとわかるレベル。問題は表現の一言一句ではなく、ことの本質は当時の『人間の体温』や『震災への向き合い方』にかかわるもの」と疑問を呈した。

 被災地での取材を重ねるノンフィクションライターの石戸諭(さとる)さんは、「被災者個人の手記や、現地を取材して言葉を選び抜いて書いた文章の使い方について、北条さんの姿勢には批判的な立場を取らざるを得ない」。震災では多くの人が亡くなり、影響が今も続く繊細な問題であり、「北条さんの『何かを伝えたい』という思いに嘘はないと思うが、言葉を発した人に敬意を欠いた行為だった」と断じた。

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 インターネット上では、北条さんと「美しい顔」について、「盗用、剽窃」などの中傷があり、今回の問題が小説の幅を狭めるのを懸念する声も上がる。

 ある出版社の文芸担当編集者は「いろいろなものを参考にしつつも小説は、それらを再構成し新しい世界を提示する。参考文献があったとしても作品全体は別物」。『群像』6月号の選評では、細部の描写に限らず「現代社会において普遍性をもつ文学作品」(野崎歓さん)としてのスケールの大きさが高く評価された。

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