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【本ナビ+1】詩人・和合亮一 『常世の花 石牟礼道子』若松英輔著 生者が育てる死者への想い

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詩人・和合亮一 『常世の花 石牟礼道子』若松英輔著 生者が育てる死者への想い

「不特定多数の人に親しい手紙を出すような気持ちで詩を書いている」と話す和合亮一さん 「不特定多数の人に親しい手紙を出すような気持ちで詩を書いている」と話す和合亮一さん

 昨年に熊本に出かけた折に、石牟礼道子さんにお会いできるかもしれないという機会をいただいていた。あまりご体調がよろしくないご様子で叶(かな)わなかった。訃報をお聞きしてご冥福をお祈りした。

 若松英輔の新著『常世の花』を読み耽(ふけ)った。若松という書き手がどのように石牟礼さんと向き合い、時折に語り合ってきたのかについて思いをめぐらせた。水俣病の患者とともに生きて記した『苦海浄土』などの著作をあらためてひもとく機会ともなった。

 本書に何度か登場する言葉に「荘厳」がある。「自分の中のいちばん深いさびしい気持を、ひそやかに荘厳してくれるような声が聞きたいと、人は悲しみの底で想っています」と石牟礼は語る。

 だからこそ山の声、風の声を魂の奥で聴くのだ、と。私も東日本大震災の津波の後の日々の海辺でかつてその声のような何かを求めていた。別のところでは「深みからの光に照らし出されるという意味」とそれは語られている。

 若松はご体調などを見計らって時折に、熊本の石牟礼さんの元へと通った。初めは対談やインタビューを重ねているのかなという印象を持ったが、そういうことよりも、もっと縛りのない雑談をしに行くのだと彼から直接に教えてもらったことがある。

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