【ときを紡ぐ絵本 親子とともに】『おこだでませんように』 子供の「よくなろう」とする営み
平成20年に小学館から刊行された『おこだでませんように』(くすのきしげのり・作、石井聖岳・絵)には、子供の真っすぐな心と、大人がそれに気づき、受け入れ、応えることで、ともに「よくなろう」としていく姿が描かれています。
小学1年生の主人公「ぼく」は、家でも学校でも怒られてばかり。妹を泣かせたのにも、友達をぶったのにも「ぼく」なりの理由がありますが、それを言うとお母さんも先生ももっと怒るに決まっているので、黙って横を向いてまた怒られます。
「ぼく」は思います。「どないしたら おこられへんのやろ。(中略)どないしたら ほめてもらえるのやろ。ぼくは……『わるいこ』なんやろか」と。そして、習ったばかりの平仮名で、七夕の短冊に「おこだでませんように」と一番の願いを書くのです。
作者のくすのきさんは、「この子は、だれよりもよくわかっているのです。自分は怒られてばかりいるということを。(中略)自分が怒られるようなことをしなければ、そこには、きっとお母さんの笑顔があり、ほめてくれる先生や、仲間に入れてくれる友だちがいるのだと。(中略)『おこだでませんように』。この子にとって、それは、まさに天に向けての祈りの言葉なのです」と記しています。
短冊を見た先生もお母さんも、「ぼく」の願いに気づき、関わりを振り返り、応答していきます。その夜、「たなばたさま ありがとう。(中略)おれいに ぼく もっと もっと ええこに なります」という言葉の中に、「ぼく」の「よくなりたい」という願いを読み取ることができます。