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【本ナビ+1】シンガー・ソングライター 丸山圭子 『日の出』佐川光晴著 日本人の生き方気づかせる

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【本ナビ+1】
シンガー・ソングライター 丸山圭子 『日の出』佐川光晴著 日本人の生き方気づかせる

シンガー・ソングライター 丸山圭子(萩原悠久人撮影) シンガー・ソングライター 丸山圭子(萩原悠久人撮影)

 この時代に見直すべき人と人の信頼関係の大切さ、またまじめに、ストイックに生きる意味を教えてくれる一冊…そんな本に出合った。

 物語は明治の終わり、13歳の清作が徴兵を逃れるため故郷の北陸・小松を飛び出すところからはじまる。清作は岡山で身を隠しつつ鍛冶職人として修業していたが、追っ手から逃れるため九州・筑豊、川崎、横浜へと流れていく。

 場所、取り巻く人は変わっても清作の鍛冶職人としての仕事ぶり、まじめでひたむきな生き方、人の役に立ちたいという思いやり、やさしさは変わらない。徴兵逃れの身の上という制約された暮らしのなかで、温かく支えてくれる友、恋人にも巡り会う。

 実は、この物語には、現代を舞台にもう1人、主人公がいる。清作のひ孫、あさひ。中学校社会科教師として教育現場で苦悩しながら、自分に思いを寄せてくれる青年に出会い、希望を見いだす。

 時代を隔てた2人の人生が交互に描かれるが、それをつなぐのは「朝鮮」。逃亡の末、潜り込んだ朝鮮人街で交流をはぐくんだ清作、在日コリアンの生徒と日本人生徒の関係に心をくだくあさひ。2人の姿を通して、時を経ても国と国の禍根を残す一方、人と人の信頼関係、強い絆は国、民族を超える-と訴えかける。また周りに流されず、ぶれずに、勤勉に学び、働き続けるという、日本人が本来持ち、誇りにしていた生き方も気づかせてくれる。

 今、人々は信頼関係をなくし、足を引っ張り合い、臭いものに蓋をして面倒なことは避けて通る…現代社会は変わってしまった。けれど、地道な努力を重ね、家族を持ち、次代につなげていく。そんなごく当たり前の幸せが、どれほどかけがえのないものか、ひしひしと胸に迫った。(集英社・1600円+税)

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